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はぐはぐ

たまにはまったり、べたべたする時間があってもいいじゃない。


はぐはぐ


 いつものように雪奈と里玖は喫茶エンジェルホームに遊びに来ていた。
 夏休みということと、雪奈の父親が出張(しかも1か月の長期)のために雪奈はミカエリス夫妻の家にお泊りをしている。
 ちなみに里玖の家はエンジェルホームより近い位置にあるのでお泊りはしていない。
 そんなわけで、雪奈は出された課題を消化し、里玖はベッドに凭れて本を読んでいた。
 カリカリと書き進めるとペンの音とページのめくる音だけが空間に響く。
「……やーめたっ!」
「ん? どうした?」
「つまんないからやめたっ!」
 そういって、雪奈は課題を片付け始める。
 里玖は首をかしげている。
「課題終わらすと言っていたじゃないか」
「そうなんだけど……せっかく里玖がいるのに、課題やるのはねー」
 雪奈はいそいそと課題を鞄の中にしまうと、里玖のほうに体を向ける。
「ん?」
「ぎゅー!」
 飛びつく勢いで、雪奈は里玖に抱きついた。
 突然の出来事に里玖は眼を点にさせて驚いている。
「ゆ、雪奈!?」
「今日はハグの日だって、なんかで見たから」
 えへへと笑う雪奈に里玖は納得をするとホッと息をつく。
「雪奈」
「ん?」
 抱きついている状態からお互いの顔が見えるように離れると、里玖はこつんと雪奈の額に自分の額を当てる。
「そうゆうことは、ほかのやつにやるなよ」
「大丈夫、里玖にしかやらないよ」
 楽しそうにいう雪奈に里玖は柔らかく微笑むと、雪奈の額や瞳にキスを降らす。
 くすぐったそうに、けれども嬉しそうに雪奈はそれを受け入れ、そしてそのまま重ねるだけのキスを交わす。
 ゆっくりと、ちょっと名残惜しそうに離れた二人は一瞬だけ視線を絡ませて照れ臭そうに視線を外す。
 お互いに笑い声が漏れると、どちらともなく互いを抱きしめて強く強く、存在を確かめ合うのだった。