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【現パロ】童心少女と大人世界(終)


続き
《秩序レベル99》
 街のためと考えていた5人の子供たち。
 最初は意気投合して楽しんでいたはずなのに、今では遊ぶどころか顔を合わすことすらなくなった。
 ユイ自身、楽しいと思うどころかすべてにつまらなさやどこか理不尽さを感じていた。
 そして、どうしてかそれに似た感覚があることに疑問を持っていた。
(久しぶりに、散歩に行こうかな)
 仲間であったはずの子供たちから非難を受けるようになり、ヒミツキチの外へ出歩くことがなくなっていったユイ。
 気分転換にと外に出てぶらぶらと歩いていたら、いまだにガラクタを降らせている穴の近くへと来ていた。
(まだ降ってる……そういえば、これっていったいどこから……)
 何気なく見上げた穴。
 じっと見ると、穴には見覚えのある“大人の男”の顔と“大人の女”の顔。
「あもう……せんぱい……?」
 無意識に発した言葉。
 その瞬間、電流が走ったような衝撃がユイを襲う。
「天羽……先輩に……紗良ちゃん……!」
 今までになかったはずの“記憶”がユイの体に流れ込む。
 ユイが見ていた穴の先は、悠衣が眠る世界につながっていたのだ。
「あ……あ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


ガバリッ
「!?」
「悠衣ちゃん!!」
 あれから2週間弱がたった、悠衣の眠る病室の中。
 いつものように見舞いに来ていた護と紗良は、急に起き上がった悠衣を見て驚いた。
 荒い呼吸を繰り返す悠衣に驚いて声を失う護と紗良。
 飛び起きた悠衣は辺りを見回してつぶやく。
「ここは……どこ……」
「お、起きたんだね! 悠衣ちゃん!」
「ここはどこ……」
「会社近くの病院だよ。悠衣ちゃん、2週間近くも眠ってたんだよ!」
「びょう……いん……?」
「あぁ。そうだよ。聖川のいうとおり、ずっと眠ってたんだ」
 説明をする2人を見る悠衣。
 その瞳から光が失われていることに、当人も2人も気づかない。
「……かえらなきゃ」
「「え?」」
「みんなが待ってる。あの場所に帰らなきゃ……」
「ちょ、ちょっと悠衣ちゃん? 何言ってるの?」
 ベッドから降りてふらふらと歩き出す悠衣。
 その行動に驚く2人だが、はっと護は我に返る。
「おい、どこ行くんだよ! まだうごく……」
「帰らきゃ……」
 止めようとする護の腕を振り払い、ふらふらと病院の外へと向かっていく。
「あの街はつまらない世界になっちゃった……ここと同じつらい世界に……」
「悠衣! 待て悠衣!!」
「いやなひどい大人たちと私は違う……次こそ、みんなが幸せになれる世界にするんだ……」
 今の悠衣にとって、周りの景色はモノクロの景色だった。
 その中で白く輝く丸いサークル。
「あった……あった! 楽園都市の入り口……!」
「悠衣! どこに行くんだ悠衣!」
 悠衣は丸いサークルに向かって走り出す。
 後を追いかけてきた護は、彼女の名を呼び続けるが届いてはいない。
「今いくよ! もう一度、“らくえんとし”を作るんだ!!」
「行くなぁ!! 悠衣ぃぃ!!!!」
 悠衣は光輝く穴に向かって飛び込んだ。
 それを引き留めようと護は腕を伸ばすが、ほんのわずかに届かず、宙をつかんで地面にたたきつけられる。
 その場に残ったのは護と、悠衣が履いていた靴の片割れ。
 悠衣が飛び込んだ穴は、工事中で開いていたマンホールの穴だった。

その後、彼女がどうなったのかは誰も知らない

***
原曲聞いてて、あるコメントを見て鳥肌が立ったのは今でも忘れない。
たぶん、どうでもいいことだと思うけど。

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