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夫婦になる話

タイトルがあれだった仮で書いてみたのが日記の題名。
たぶん、間違ってはいない。
そしてどうしてこのネタが浮かんだのかも忘れたという。
ちょいとアレだよ。見る人いないだろうけどR-15ぐらいかもよ。

続き

 里玖からのプロポーズを受け入れた雪奈。
 もともと同居していたこともあり、何変わることない生活を送っていた。
 朝起きて共に食事をし、昼はそれぞれの仕事をこなし、夜は共に食事をして二人きりの時間を過ごす。
 雪奈宅で、お茶をしながらその話を聞いた共通の親友・弥悠は驚いた。
「え、それマジ? なんの発展もないの?!」
「発展って……特にはないかな?」
「こう、夫婦の営み的な、甘い展開というかさ」
「う~ん……ないかな?」
 雪奈から普段の様子を聞いて弥悠は愕然とする。
 里玖と雪奈は夫婦の契りを執り行ったばかりだったからだ。
「ありえない。バカじゃないのあの男……」
「弥悠、言い過ぎ」
 困り顔で里玖を避難する弥悠を制する雪奈。
 くわっと目を見開いて弥悠は反論する。
「だってよ! 夫婦の契りを交わしたってことは晴れて夫婦として認められたのよ! いくら結婚式を上げてないにしろ今までと同じというわけにはいかないでしょ!!」
「まぁまぁ」
「そうゆうあんたはどうなのよ! 何もなくていいの?!」
「よくは……ないかな?」
「でしょ?!」
「でもね、里玖。怖いみたいなんだ。私に触るの」
「は? 怖い?」
「うん。抱きしめてくれるけど、躊躇ってたり。力強く抱きしめてくれるけど、手が震えてたり」
「なにその矛盾。あんた一筋の里玖が?」
「うん」
 惚気紛いの話を聞きつつ、自分の知る里玖から想像できないと弥悠は思う。
 そして考え、思いつく。
「そしたら、里玖には克服してもらわなきゃね。何が原因かはわからないけど」
「克服って?」
「里玖は雪奈に触れることに抵抗があるってことでしょ? ならばその抵抗すら忘れて、触りたくなるように仕向ければいいわけよ」
 ぐふふと、笑いながら言う弥悠に雪奈は苦笑いするのだった。


 その日、討伐依頼をこなしてきた里玖が帰宅したのは陽もとっぷりと沈んだ夜だった。
(ずいぶんと遅くなってしまった……雪奈は寝ただろうか)
 音をたてないように家の中へと入る里玖。
 テーブルには小さな蚊帳が被された一人分の食事が置かれていた。
(悪いことをしてしまったな)
 そのまま音を出さないよう寝室へと移動する。
 窓際に置かれたベッドの上、月明かりに照らされながら眠る雪奈を見つけた里玖はそっと近づく。
 そして、雪奈の姿を見て思わず固まった。
 普段は着ないパステルカラーのキャミソールに黒のホットパンツ姿で寝ていたのだ。
 ちなみにキャミソールの肩ひもは肩から外れかかって肌蹴かかっており、へそもちらりと見えている。
(こ、これはいったい……!?)
 規則正しく動く胸元に顔を背ける里玖。
 何がどうしてこうなったと言わんばかりに思考をぐるぐると回転させて現状を理解しようとする。
 そんな時、里玖の中にいる欲望たる悪魔がそっと囁く。
『これはチャンス到来じゃないか。まるで誘ってるような服装、今いかないでいつ行くんだ』
 そんなささやきを遮るように、理性たる天使が里玖を諭す。
『寝こみを襲うなんて何を考えてるんだ。強引にして雪奈が傷ついたらどうする。嫌われてそばを離れていったらどうするんだ』
『なら起こしてヤレばいい』
『耳を貸すな! 嫌われたくないだろう? 泣き顔なんて見たくないだろう?』
『天使(おまえ)はバカだな。これは来てくれって言ってるようなものだろ? 俺たちはもう夫婦なんだ、嫌がられはしないさ!』
(わー……里玖の声だだ漏れだ……)
 実を言えば、雪奈は起きていた。
 寝たふりをして里玖の帰宅を待っていたのだ。
 が、葛藤に苛まれる里玖を薄目で見て、どうしようかと雪奈は考える。
 弥悠の考え、それは単純にお色気作戦だった。
 普段の寝巻は露出の少ないロングワンピースなのだが、キャミソールにホットパンツ姿―しかも肌蹴た状態―で寝れいればきっと里玖も興奮すると自信ありげに弥悠は言ったのだ。
 実際、欲が湧いて理性で抑えようとしているが。
(これは、ちゃんと言ったほうがいいのかな? でも、なかなか見れない姿だしな)
 寝たふりをつづけつつ、里玖の様子をみる雪奈。
 里玖は己の中の悪魔と天使からの囁きに余裕すら持てない状況だった。
『なぁ里玖(あいぼう)、夫婦となればやることは1つだろ? いつやるんだ? 今でだろ?』
『耳を貸してはダメだ。せめて、ちゃんと雪奈に話をしてだな――』
『そんなまどろっこしいことしてたらいつまでも出来ないだろう。本当は壊れるぐらいまでに抱きたいんだろ? なに、大好きな里玖(あいぼう)を拒みはしないさ!』
 天使と悪魔の声に悩む里玖。
 そんな里玖を薄めで見ながら雪奈は考える。
(これは……起きて声をかけたほうがいいのかな)
『何を悩むんだ里玖(あいぼう)。そんなにも怖いのなら味見だけに留めればいいんじゃないか? 据え膳食わぬは男の恥だとい――』
『黙れ! これ以上を聞いてはだめだ! そんなことをして恐怖に染まった顔を、涙にぬれる顔を見たいのか? させたいのか? 俺たちはあの笑顔に何度助けられた? あの笑顔があったから、闇の力を得たときも耐えられただろう?』
「お、俺は……」
「里玖」
 心に響いてくる里玖の心の声に耐えかねて、雪奈は体を起こして里玖を呼ぶ。
 欲望と理性のせめぎ合いを繰り広げていた里玖は声がかかったことに驚いた。
「雪奈、起きて……!」
「おかえり」
 困惑する里玖に向かって両腕を広げる雪奈。
 戸惑いを見せながらも、里玖は雪奈をゆっくりと抱きしめる。
「お、遅くなった……」
「お疲れ様……私はいいよ」
「?!」
「里玖となら……怖くない、から」
 そう言った雪奈の声が、自分を抱きしめる腕が少しだけ震えていることに里玖は気が付いた。
 それと同時に里玖は冷静を取り戻し、ぎゅっと強く雪奈を抱きしめる。
「す、すまない……俺が不甲斐ないばかりに……」
「ううん、そんなことないよ……ただ、ちょっと不安だったの」
「不安……」
「今までと何も変わらないから、本当は嫌だったのかなって……」
「嫌なんてあるものか! むしろ、これ以上進むのが、怖かったんだ……雪奈を傷つけそうで……怖かったんだ……」
「里玖……」
 雪奈の肩に顔をうずめ、弱弱しくなる声で里玖はつぶやく。
 そんな里玖の背中を雪奈はポンポンと、子供をあやすように叩く。
「さっきも言ったでしょ? 里玖となら、怖くないって」
「でも、震えてた」
「ちょっと、冷えちゃっただけ。だから、大丈夫だよ」
 大きな子供みたいだな、と思いながら雪奈は里玖に言い聞かせるように言う。
「今日がだめならまた今度。里玖の気持ちに整理がつくまで待つから」
 “ね?”と顔を上げて笑顔で雪奈は言う。
 その表情を見て、里玖は雪奈の額にキスを落とすと瞳、鼻筋、そして唇にキスすると、そのまま己の舌で雪奈の唇を割り、中へと侵入させる。
 突然のキスに身を委ねる雪奈だが、深い口づけに呼吸することを忘れ里玖の服をギュッとつかむ。
 里玖はゆっくりと雪奈を開放し、またぎゅっと抱きしめた。
「すまない、自制をかけるつもりだったのだが……」
「ううん……だいじょうぶ、だよ……」
 大きく肩で呼吸し、やや艶を帯びた声で答える雪奈。
 お互い、見つめ合うとどちらからともなく口づけを交わすのだった。

 その後、里玖と雪奈は晴れて本当の意味で夫婦となれたのは、また別のお話。

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