さらに数日が経った。
その日は護と紗良が眠っている悠衣のそばにいる。
「天羽君、あの日からずっと悠衣ちゃんのそばにいてくれるけど……どうして?」
「どうして、か……あいつの教育担当ってのもあるけど、初めて会った時に“こいつとなら”って思ったんだ。変だろ? 年も離れてる上に初対面でだぜ?」
自嘲気味に話す護に、紗良は不安そうな顔をする。
「今まで結婚願望なんてなかったのに、“こいつとなら結婚してもいいかなって思ったんだ”。けど、付き合うどころか初対面の人間に言われてやっぱ引かれると思って、距離縮めてから言おうと思ったんだ」
「そっか。だから天羽君、悠衣ちゃんに優しかったんだね」
「べ、別に優しくなんかはしてないぞ。仕事だから厳しく……」
「ううん、優しかった。そうじゃなきゃ、残業してた悠衣ちゃんを放っておくもの」
護の本心を聞いて、紗良は少し安心したような表情を浮かべた。
《秩序レベル30→50》
発展と拡大を繰り返す子供たちの楽園都市。
いまだ、穴から振るガラクタは止まず、それどころか子供たちには刺激的すぎるものまで降り始めていた。
「……お、これは使えるかも」
「ヒカリー! これ面白そうだぞー!」
「おー! それも使おうぜ!」
ヒカリを中心とした男の子数人のグループはガラクタ山で、新しいものが作り出せないかと材料になるものを探していた。
その中で見つけたものは、使われなくなったであろう「電車」や「砲台」、「ロケット」、そして「ピストル」。
ヒカリはモノづくりが得意のようで、見つけてきた材料を上手に組み合わせては新しい遊び道具を生み出してきた。
今回見つけたそれらもうまく組み合わせて、十数人の子供たちが乗っても大丈夫な移動もできるおもちゃを作り上げた。
しかし、“刺激的なもの”は時に表情を変えて“過激的なもの”へと変化する。
中心となる5人と、乗りたいといった子供たち数人の乗った新しいおもちゃは、子供たちには手におえない玩具であった。
速度を上げて走るその電車(おもちゃ)は、何人もの子供たちをひき殺してしまった。
つけられた砲台は、爆薬物を吐き出して何人もの子供たちを焼き殺してしまった。
唯一手に持てるサイズのピストルは、たやすく命を奪うものだと扱って知った。
それらはすべて使い方を知らずに遊んだ、“うっかり”から起きた悲劇。
仲間たちを失い、自分たちの起こした悲劇に残された子供たちは悲しみ、そして慄いた。
自分たちが起こした“死(しっぱい)”を2度と起こさないように、教訓に変えようと決意したのだった。
そんなあるとき、ユキナとユイはガラクタの山に混じっていた“本”を見つけた。
中を見てみるも何がなんだかさっぱりで、それを見たリクが言う。
「これは、たぶん決まり事を載せたものだと思う」
「決まり事?」
「何をしたらいけないとか、なにをしてもいい代わりになにをしないさいとか。そんなことが書かれる、気がする」
「へぇー……これを読んだら、前みたいなことが減るかな」
「かもしれない」
リクの説明に、ユイはこの本を使って知識をためることを覚えた。
そして、いつも中心となる5人そろって本を読むことで、亡くなった彼らの“死(ぎせい)”を無駄にしないように勉強し始めるのだった。
そして、決意は実行された。
今のままではだめだと気づき、禁止事項や規則などのやってはいけないことを仲間たちに伝え、それを破った人には怖い罰を与えると決めたと伝えた。
しかし、決めたのは中心となる5人だけで、その決定に賛同する子供たちもいれば反対する子供たちもいた。
子供というものは極端で、意見が合わないだけど喧嘩に発展しかけてしまう。
この世界の子供たちも同じで、今まで仲良く遊んでいたはずなのにいつの間にか、ギスギスとした空気が流れ始めていた。