(もういや! ちゃんと仕事してきたのに! 怒られながらもちゃんと終わらせてきたのに!)
悠衣はがむしゃらに街の中を走っていた。
(紗良ちゃんがあんなこというなんて! それを聞く支部長もひどいよ! こっちの話なんてまるで聞いてくれないのに……!)
ぽろぽろと涙があふれ、視界がゆがむ。
(みんな、みんな……大っ嫌いっ!! あっ)
石につまづき、悠衣は派手に転んだ。
そのまま座り込み、うなだれて涙をこぼす。
「もういや……こんなのなら子供のままでよかった……!」
―貴方ノ ソノ 不幸ニ サヨナラ―
どこからか聞こえた声と撫でられた感触に悠衣は顔を上げる。
悠衣の目の前にいたのは、自分よりも幼い、低学年ぐらいの女の子。
どこか、悠衣に似たような風貌で同じような眼鏡をかけている。
女の子は悠衣に向かって手を差し伸べた。
涙をこぼしながら悠衣は女の子の手を取ると、女の子はある場所を指す。
その先には、光る丸い場所があった。
まるで、ワープゾーンにも似たサークル。
悠衣は立ち上がり、女の子に導かれるようにその場所へ歩いていき、そして――
「水卜! ……悠衣!!」
息を切らした護が悠衣の腕をつかみ、引き上げる。
「なにやってんだよ! 落ちるところだったんだぞ!!」
怒声にも近い声をあげる護だが、悠衣はウンともスンとも言わない。
「おい! 悠衣聞こえてるの……か!?」
悠衣の体がぐにゃりと力が抜けたかのように地に落ちる。
慌てた護は幾度も悠衣の名を呼び続けた。
《秩序レベル0→1》
「ん……」
何もないところで、小さな子供たちが目をさまし、起き上がる。
帽子をかぶった男の子、外国人っぽい男の子、ワンピースを着たショートボブの女の子、ボーイッシュな女の子、そして眼鏡をかけたロングの女の子。
眼鏡の女の子はまるで、悠衣を小さくしたような子だった。
「ここ、どこだろう…」
「わかんないや」
「ほかにだれかいるのかな?」
「……」
顔を合わせ、ここは何処だろうと話す子供たち。
眼鏡の子がはっと思い出す。
「そうだ。あたし、ユイ! みんなはなんていうの?」
「わたしわユキナ。よろしくね」
「ヒカリ、よろしく!」
「おれわレン! よろしくな!」
「……リク」
眼鏡の子から、ショートボブの子、ボーイッシュな子、帽子の子、外国人っぽい子が順々に自己紹介していく。
「なにしてあそぼうっか?」
「おにごっこしようぜ!」
「「「さんせーい!」」」
「……」
「それじゃ、いくぞー!」
帽子の子・レンが率先して鬼決めを始まる。
外国人っぽい子のリクも黙っていながらも参加するのだった。
やがて時間が経ち、空は宵の帳に包まれていた。
鬼ごっこやかけっこで楽しんだのか、みな疲れて地面に寝転がっている。
「つ、つかれたー」
「いっぱいはしったもんねー」
「もう、うごけないよ……」
「……」
「でもさー」
レンがつぶやく。
「なーんもないよな。これじゃかくれんぼとかもできないよ」
「……そうだねー」
「ほかのあそびもしたいよね」
「あ、ながれぼし!」
空を見ていたユキナが指をさす。
空にはたくさんの流星が流れていた。
「おほしさまにおねがいしよう!」
「うん、それがいいよね!」
「そうしよそうしよ!」
子供たちは流れていく星々に願うため、それぞれ手を組んで祈る。
『あたらしい "あそび" を わたしたちに ください』