cosMo@暴走Pの楽曲「童心少女と大人世界」を聞いて書きたくなった作品。
原曲は主人公たる少女しかいないけど、どうしてもジェナスとユイがあってると思ったので。
早く活躍させてあげなきゃな、敵組…(@本編)
今回描写がうまく書けなかったのでここに書いておきます。
あと視点変更多めかつ文章がおかしかったりします。
水卜悠衣(ユイ)→黒のセミボブ、メガネ着用。
聖川紗良→黒茶のロングに綺麗な顔立ちのお嬢様。
天羽護(ジェナス)→金の短髪。イケメン。
天方征司(ラグナ)→青髪の青年。やっぱりイケメン。紗良と付き合っている。
帰らなきゃ……帰らなきゃ……!
あの場所に、私たちの“楽園都市”に!!
童心少女と大人世界
“夢を持ちなさい”
目指すものがあれば、人はそれに向かって努力するようになる。
そう言ったのはまだ小学生だったある少女の担任だった。
少女はその言葉に感動し、幼いながらに恩師のような教師になりたいと思い、そのために努力をした。
少女の名は水卜 悠衣(みうら ゆい)
教師を夢見て努力した彼女は、現在ある会社の支部でOLとして働いている。
人気の少ないオフィスで、カタカタとキーボードを叩く音が響く。
その音の正体は、作業ををする悠衣だった。
外は暗く、照明も少ない中で眼鏡をかけ、机にあるたくさんの書類とパソコンの画面を交互に見ながら打ち込みの作業をしている。
このオフィスにいるのは悠衣一人だけ。
壁に掛けられた時計は午後10時を指していた。
(はぁ……終わらない……今日は早く終わらせて駅前のケーキ屋に寄る予定だったのになぁ……)
はぁ…と深いため息をつく悠衣。
ガチャリ、と扉が開く音に悠衣は思わず顔を上げた。
「やっぱりなぁ」
「天羽先輩……!」
入ってきたのは悠衣の先輩である天羽護だった。
「まだ働いてると思った。残業何日目だよ、ったく」
そう言われ、しゅんとする悠衣。
「あの親父、何考えてんだか……ほら貸せ」
「だ、だめですよ! 支部長に怒られてしまいますよ……」
「いいんだよ、あんなハゲ親父。一人でやるより2人で終わらせたほうが早いし、難癖つけて残業代出さない気だぞ、あのハゲ親父」
まったく、新人なんだから、と言いながら護は悠衣から書類を半分ほど奪い、隣の席について作業を始める準備をする。
「おっと、そうだった。これやる」
そう言って差し出したのはコンビニの袋。
中には栄養ドリンクとおにぎりが数個、入っていた。
「あ、ありがとうございます…!」
「気にすんな……うへ、聖川宛の書類も交じってる。まじあの親父何考えてんだ!?」
「…聖川さん、広報の仕事で忙しいから……」
「いやいや、広報の仕事あっても本人にやらせるべきだろうに……これは俺がやっておく、ほかに聖川宛は」
「えっと……」
聖川とは、悠衣と同期で入った新人の聖川紗良という女性のこと。
顔立ちがよく、今務めている会社に知人がいるせいなのか、広報の仕事を任されオフィスにいることは少ない。
さらに、支部長は紗良が新人だということで広報の仕事について回っている。
そのツケがどうしてか同じ新人である悠衣に回ってきているのだ。
「もう全部貸せ。俺が見る。その間にそれ食っとけ」
そう言って護は強引に書類を悠衣から奪って素早く確認していく。
そんな護の行動に、またシュンとしてしまう悠衣。
しかし腹は減るもので、小さくなりながらおにぎりを1つ食べることに。
やがて、バサッと護は悠衣に書類を差し出した。
「これ、締切が近いが今日やらんでも平気な分。あとは全部聖川の分だからお前がやる必要はない」
紗良宛ての書類をバサバサと束ねながら護はいう。
悠衣がするべき仕事は支部長から渡された分の1/4もなかった。
「あ、あの、先輩……!」
「大丈夫、何か言われたら俺の名前を出せ。守ってやる」
「あ、ありがとうございます!」
「今日はもう帰ろう。終電なくなるぞ」
そう言われ、悠衣は時計を見る。
時間が経つのは早いもので、針は11時を指していた。
「はわわわ!?」
「途中まで送るよ」
「す、すみません……」
慌てて帰り支度をする悠衣に護は「おちつけー」と言って自分も支度をする。
その数分後、オフォスに残った最後の社員たちが出ていった。
それから数日後の日曜日。
誰もいないオフィスに出勤する一人の影。
それはちょっと疲れを見せた悠衣だった。
護によって分けられた仕事以外にも仕事を回されたために休日出勤して消化するようだった。
(休みの日にも来るのかー!って支部長に怒られそう……でもやらないと終わらないんだよね……)
はぁとため息をつきつつ、仕事を始める悠衣。
(教師目指してきたのに倍率高いし、試験には落ちるし……紗良ちゃんには感謝してるけど……これじゃ終わらない罰ゲームみたいだよ……)
ネガティブな気持ちになりながら、締切目前となっている書類たちを片付けていくのだった。
2週間ほどたったある日。
悠衣は支部長に呼ばれ、支部長室にいた。
「え……クビ、ですか……?」
「そう。うちの試用期間は半年。まともに仕事もできない子は必要ないし、聖川ちゃんが水トちゃんに仕事させないでほしいて頼まれてね。てっとり早くやめてもらうことにしたのだよ」
「なっ……!?」
支部長から言われたリストラの理由はあまりにも理不尽で、あまりにも納得のいくものではなかった。
「そういうわけで、明日から来なくていいから」
“出て行った”というように手で払うしぐさをする支部長。
グッとこぶしを握り、流れ出そうな涙をこらえる悠衣。
そんな彼女に気づかない支部長は、まだいることに――
「出て行けと言っているんだ!!」
「っ!!!」
はじくように悠衣は部屋を出ていく。
「お、水卜。どうし……」
外回りから帰ってきた護が駆け出してく悠衣に声をかけた。
しかし、悠衣は護に気づかずに会社を出て行ってしまう。
「なんだ……?」
「天羽君……!」
「おぉ、聖川。どうした?」
ちょうどオフィスにいた紗良が護を見つけて駆け寄る。
その表情は不安でいっぱいだった。
「悠衣ちゃんが……支部長が悠衣ちゃんをクビにしちゃった……!」
「はぁ!?」
紗良は悠衣が支部長に呼ばれた後、仕事をせずに支部長と悠衣の会話を聞いていたと護に話す。
その内容はあまりに理不尽なリストラ宣告だったと。
「私、広報の仕事しかさせてもらえないから天方君からの仕事もちゃんとできてなくて……だから支部長に掛け合って、ちゃんと仕事させてほしいって頼んだの。そしたら悠衣ちゃんに全部任せてるって言われて……それで、本来は私の仕事だから、悠衣ちゃんに回してる分を減らして、ちゃんと回してほしいって頼んだら……」
「てっとり早くクビだと…?! あいつ、毎日のように残ってこなしてるのに“仕事ができない”だって!?」
話を聞いて怒りが収まらないという表情の護。
しかし、はっと我に返り外へとつづく扉に向かって走り出した。
「ちょっと、天羽君!」
「追いかけてくる!」
そう言って、出て行った。