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[SS]ヒトガタ携帯な小話[里玖雪…?]

本当に書きたかったのはこの後の話だった…

続き

#うちの子がヒトガタ携帯だったら(充電方法編)

 通話やメールなどの基本的な操作方法を香月やユキナに聞き、あらかた理解して必要物品を預かったところでふと思う。
「香月、充電はどうすればいい」
「へ? ケーブルあげたじゃん」
「台とかないのか。ケーブルだと差込口が緩くなりやすいだろう」
「あぁ。なるほど。台がほしいわけか……そうね……」
 香月は部屋の中を見回し考える素振りを見せる。
「二日ぐらい時間を頂戴。電池はアプリをたくさん開いたり通話しまくらなきゃ簡単には減らないから」
「ふむ……」
「できたら呼ぶから待ってて頂戴な。AIも入れてみたから話し相手にはなると思うわよ? さぁ、出てった出てった」
 そう言って香月は今まで使っていた携帯とユキナを持たせて俺を家から追い出した。
 特に予定もないため、とりあえず家へと連れ帰ることにしよう。


『ここがマスターのお部屋……物が少ないですね。検索アプリを起動させて家具を探しますか?』
「いや、しなくていい……」
 とりあえずユキナをテーブルに乗せ、置き場になりそうな場所を考える。
 指摘された通り確かに物は少ないから置き場には困らない。
 だが、ケーブルの位置とコンセントの位置を考えると寝室か……?
「ユキナ、現在のバッテリー残量はどれくらいだ」
『現在の電量は94% 通話7時間50分 Wi-Fiネットワーク8時間28分 モバイルデータ通信7時間55分 ミュージック再生……』
「わかった。ありがとう」
『はぁ、はい』
 きょとんとしながら雪奈は残量を告げるのをやめる。
 さて、これからどうしたものか。
『マスターは一人で住んでるんですか?』
「あぁ」
『さみしくないですか?』
「別に」
『そう……ですか……』
「……ユキナ、待機モードにはできるか?」
『はい。できますが……最低限の機能だけになりますよ?』
「あぁ。構わない」
『わ、わかりました……』
 シュンとしたような表情をして、ユキナはテーブルに座り込むと目を閉じた。
 これで静かになったな。
 ユキナが静かになったところで溜めていた家事を済ませることにした。


 それから二日後の朝。
『! 香月弥悠 からメールが届きました』
 ぱちりと目を開けてユキナは立ち上がる。
 待機モードに入るまではテーブルにいたのに、今は主である里玖の眠るベッドサイドテーブルに立っていた。
『マスター?』
 布団の隙間から見える銀色の髪をみて、布団に包まり寝息を立てているのだろうとユキナは推測する。
 時間を確認すれば午前8時を過ぎていた。
 ユキナは小さな体で眠る里玖の傍へと降り立つと、大きな布団を揺らす。
『マスター朝ですよー。香月弥悠からメールですよー』
 しかし小さな体では揺らすと言っても微々たるもので、まったく効果はなさない。
『起きない……えっと、確か前に……』
 以前の所有者であった弥悠から聞いていた事柄を過去ログから引き出そうと考えるユキナ。
『マスター、朝だよー!』
 目覚まし機能を利用しその音量を最大までに上げて、ユキナは里玖の耳元で思いっきり叫ぶ。
 里玖が飛び起きたのは言うまでもない。


 ユキナにひどい起こされ方をされた……
 なにも耳元で叫ぶことないだろう、と言うと。
『元マスターが教えてもらったんです』
 と笑顔で言ってきた。
『それよりもマスター、香月弥悠 からメールが届いてます』
「……読み上げてくれ」
『はい。 里玖、約束してた充電器が出来たから取りに来て頂戴。 です』
「昼ごろに取りに行くと返信してくれ」
『わかりました』
 未だ収まらない耳鳴りに頭を痛めつつ、仕方なしに俺は出かける準備をする。
 なにか嬉しいのだろうか、ユキナがそわそわしているように見えた。
「……ユキナ」
『はい!』
「再度香月にメールしてくれ。“昼飯を買ってから向かう”と」


 それから幾つかの家事をし、軽く支度をして、ユキナをジャケットのポケットに入れて外へと出る。
 向かうのは行きつけの喫茶店。
「こんにちは」
 カランカランと来店のベルが鳴るとともに中へと入る。
 店の中に客はおらず、茶色いサイドカールでワンピースの上からエプロンをつけた女性が俺を見つけて声をかける。
「いらっしゃい里玖。行ってくれたら準備しておいたのに」
 出迎えてくれたのは梨依音・ミカエリスさん。
 先日電話をくれたジーベルさんの奥さんで、店の経営者の一人。
「すいません。この後知り合いと約束があるので」
「あら残念。次来るときは連絡してからよ?」
「わかってます。それで、お願いがあるんですが」
「あら、何かしら?」
 ちょっと残念そうにする梨依音さんに簡単に頼みごとを伝えると、
「お安い御用よ、今作るから待ってて」
 と笑顔で応えてカウンターへと入っていく。
 俺は入り口近くの席に座り、耳につけていたワイヤレスイヤホンを通してユキナに聞く。
「時間は?」
『11時14分です』
「ちょうど昼ぐらいにはつくな」
『マスター?』
 声は耳につけているイヤホンから聞こえるが視線を感じてみれば、ポケットからユキナがこちらを見上げていた。
「!」
 隠れていてほしいと思い、ポケットに押込めようとしたところで梨依音さんの声がした。
「あら! 可愛い子!」
「あ……」
「どうしたの? 名前は? ほらほら出して見せなさい?」
 とても良い笑顔で捲し立ててくる梨依音さん。
 可愛いもの好きでもあるがゆえ、存在を知られなくなかったんだよな……
 言われるままに俺はポケットからユキナを出して梨依音さんに渡す。
 あぁ、ハートが飛んでるように見えるのは錯覚だろうか。
「可愛い子。あなた、名前は?」
『Type:Yukina です。今は ナカセリク のサポートをしています』
「ユキナちゃんっていうのね。私は梨依音・ミカエリスよ。よろしくね」
『リイネ・ミカエリス を覚えました。よろしくお願いします』
 梨依音さんの掌でぺこりとお辞儀するユキナ。
 ただただにため息がこぼれる。
「ねぇ里玖。この子の採寸させて?」
「え。作るんですか?」
「あらいけないかしら? 可愛い子には可愛い格好をさせたいじゃない?」
 “こんな草臥れたワンピースじゃ可哀そうでしょ?”とちょっと怒ったように梨依音さんは言う。
 うちに来てから二日ほどしか経っていないが、確かに着ていたワンピースは少し草臥れていた。
 ここまで言われてしまえばぐぅの音も出ないため、反論せずに“お任せします”としか言えなかった。
「里玖。出来たぞ……って何やってるんだ、梨依音」
 カウンターの奥から声がして、視線をそちらにやれば小さな包みを持った短い茶髪の男性、店のオーナーであるジーベルさんがいた。
「こんにちは、ありがとうございますジーベルさん」
「見て見て貴方! 可愛いでしょう、この子」
 新しいおもちゃを得たかのようにはしゃぐ梨依音さん。
 ジーベルさんは面食らったような表情をしているが、梨依音さんの掌に載せられたユキナを見て“確かにかわいい子だな”と言う。
「里玖ったらこんな可愛い子を隠してたのよ?」
「別に隠しては……」
「で? この子どうしたの?」
 さぁ吐きなさい、と言わんばかりに迫ってくる梨依音さん。
 背筋に冷や汗が流れる。
「……実は」
 仕方なく、俺はユキナを預かる経緯を簡単に梨依音さんたちに話すことにした。
「ふむふむ、なるほどねー」
 話を聞きながら梨依音さんは着々とユキナの採寸を進めている。
 梨依音さんは喫茶店を経営しながらも裁縫が趣味なのだという。
「協力ありがとう、ユキナちゃん」
『いえいえっ!』
「里玖、終わったあと用事がないなら寄りなさい? いいわね?」
 言い方は疑問形なのになぜか来なければならないプレッシャーを感じた。
 ユキナ……なぜ顔を出したのだ……
「わ、わかりました……ユキナ行くぞ」
『はいっ!』
 梨依音さんからユキナを返してもらい、ジーベルさんから包みを受け取って俺は喫茶店を後にした。


 そして昼過ぎ。
 俺はまた香月の家へと来ていた。
「香月、約束通り来たぞ」
「待ってたわよー。中に入って」
 出迎えた弥悠は相変わらず草臥れた服装をしていた。
 徹夜明けなのだろうか、目の下に隈が出来ているように見える。
「適当に腰かけてー」
 なにやらごそごそと机の上を漁る香月。
 とりあえず言われた通りソファへと腰かける。
「はい、これ」
 俺と香月を挟むように置かれたテーブルの上にコトリと何かが置かれる。
 それは人形サイズほどの小さなベッド…にしては少し大きい気もする。
 よくある人形遊びに使われそうな茶色のベッドから敷布団やらなんやらを取ったような感じのものだろうか?
「……なんだ?」
「ベッド型の充電器。置くだけで充電できるタイプね。ユキナ、ちょっとおいで」
 香月に呼ばれ、ユキナがポケットから顔を出す。
「これの上に乗ってみて。充電ができるか確認したいの」
 香月にそう言われ、俺はユキナをテーブルに載せる。
 ユキナはトコトコと歩くとベッド型の充電器に乗った。
 小さくて気づかなかったが、髪につけられた髪飾りが赤く光る。
「髪飾り、ついていたのか」
「取り外し可能だけど、充電できてるか分かりづらいから充電ランプにしたのよ。まぁできてるから問題ないかな」
 ありがとうユキナ、と香月がユキナを撫でながらいう。
「ケーブルは渡したものを使って。問題ないはずよ」
「あぁ。すまんな」
『マスター』
「あぁ。そうだった」
 ユキナに呼ばれ、俺は包みをテーブルに置く。
「行きつけの喫茶店で作ってもらったサンドイッチだ。お礼とまではいかんが」
「え。行きつけってエンジェルホームだよね?! やったー!」
 私大好きなのよねーと上機嫌で包みを開け食べ始める香月。
 まぁ、喜んでいるからいいか。
『美味しいですか?』
「えぇ、とても」
 首を傾げながら尋ねるユキナに香月はにこりと笑って答える、
 なんとなしに、不思議ながらも和やかなひと時となった。


 ある程度時間が経ち、お暇しようと立ち上がる。
「あ、そうだ。一応わかってるとは思うけど、待機モードだけはやめといてね。それと、充電は普通にユキナを乗せるだけで大丈夫だから」
「……痛くないのか?」
「喜怒哀楽の感情は多少あれど、携帯だからね。痛覚はないわ」
 もし気になるなら薄いものだったら大丈夫だと思うわよ、そう言って香月は大きな欠伸をする。
 とりあえずもらった充電台を適当にもらった袋にしまいこんだ。
「あ、香月。着替えとかってしても大丈夫なのか?」
「ん? 着せ替え? 大丈夫よ。市販で売ってるような人形の服でもいいし。でもうなじにある接続部だけは保護してね。そこが壊れちゃうと何もできなくなっちゃうから」
「了解した」
 んじゃ寝るから~と香月に追い出された。
 帰路につこうとして、ポケットの中にいるユキナが俺を見ている。
『リイネさんが寄るようにと言ってましたが、そのまま帰りますか?』
「……いや寄っていく。おそらく着せ替え人形になると思うぞ?」
『?』
 小首をかしげるユキナを小さくなでつつ、俺は約束通り梨依音さんたちのいる喫茶店に向かうのだった。

おわり


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