白い空白が鋭い爪で裂かれたかのようにぐわりと口を開く。
ぽーんと弧を描いて投げ出されたのは二人の勇者たちで、その空間には今までとは違い色がついていた。
「森!?」
二人の眼下に見えるのは鬱蒼とした森。ある地点を境に山肌が顔を覗かし、遠くの方では黒煙のようなものが見える。
放り出された高さと落ちる速度の速さに里玖は雪奈を離すまいと、守るために頭から抱きしめ、覚悟を決めていた。
「れ、レビテーション!!」
雪奈から紡がれた言葉は浮上の魔法。
落ちる速度はゆっくりと減速し、森に近づいたころには完全に速度が落ちて空中に浮いている状態だった。
「大丈夫か、雪奈」
「うん、省略呪文にしちゃったから威力弱いかと思ったけど、ブレーキ代わりになったみたいでよかった」
てへへと笑いながら言う雪奈に里玖はため息を1つ零し、かけられた魔法を御しながら地上へと降り立つ。
「まったく、無理をするなと言っただろ」
「だって、こうでもしないとぶつかっちゃうかもしれなかったし……」
「だからと言ってだな」
ため息交じりの里玖の言葉にしょぼんとする雪奈。
そんな時、雪奈ははっと顔を上げる。
その表情はどこか怯えているように里玖には見えて声をかけた。
「雪奈」
「なにこれ……怖い……」
つぶやかれた言葉の不穏さに、緊張が走る。
「何かいたのか?」
「……カリス君?……でも……これは……」
里玖の声に応えず、雪奈はただただ怯えた表情で言葉をもらす。
カタカタと小刻みに震える雪奈を里玖は自分の腕の中に収めて背中をさすった。
「……やつがいたのか?」
「似てるけど……違う……これは……悪意っ」
「大丈夫、大丈夫だ」
震える雪奈を落ち着かせるように語りかけ、そのまま背中をさすり続ける。
数分して彼女の震えは収まり、顔をあげたその瞳は涙でぬれていた。
「落ち着いたか?」
「うん、ごめん。コウ君のこと気になるけど、この気配のほうが気になる」
涙を拭きながら雪奈は言う。
里玖は雪奈の頭を軽く撫でると、眼を閉じた。
神経を研ぎ澄ませてはみるが、里玖には何も感じ取ることができない。
「……わからん。俺には感じられん」
「そう……」
「奴の気配を感じたのか?」
「わからない……でも、似たような気配があったの」
「……気になるのか」
「さっき言った通りだよ」
なんとなしに感じた嫌な予感に、里玖は眉を顰めながら雪奈に問うと、とても真剣なまなざしで雪奈はうなずいた。
「本当にお前は……」
「もしかしたら何か、大変なことになってる気がしてならないの……ダメ、かな?」
「この空間はすでに色がついている。誰がいるかもわからん。下手をすれば死にかねんぞ? それもいいのか?」
「……うん。里玖と一緒なら」
雪奈の答えに一瞬驚いた里玖は微笑みを見せると彼女を引き寄せて小さくキスを送る。
しばし抱きしめると、彼女に問うた。
「方向はわかるな」
「うん!」
二人は森の中を駆けていた。
雪奈が感じると言う悪意と気配の方へ。
何かが放たれる音、嘲笑う声、電子音の叫び、それぞれが混ざり合い辺りに響き渡る。
二人が拓けた場所に出た時、見知った姿がそこにはあった。
『カリス様!!』
「〔彼に全てから護る強固の壁を!!〕」
見えない何かから回避しようとする少年。
その光景が目に飛び込むやいなや雪奈はとっさに叫んでいた。
なんの変哲もない叫びにしか聞こえないそれは、茶髪の少年を護るように半透明の光が囲いをつくり、見えない何かを無効化させる。
「なっ…」
声は空の上から聞こえた。
そちらを見れば浅黒い肌を持つ、目の前の少年に似た姿の青年が怒りを露わにしながら浮かんでいた。
「邪魔すんじゃねェ!」
「〔光よ 我らを護れ!!〕」
青年が咆哮すると同時に雪奈が叫ぶ。
パーンッと何かが雪奈の目の前で弾け飛ぶ音がすると雪奈はよろけたが倒れまいと踏ん張りを見せた。
「大丈夫? カリス君」
若干、息を切らせながら雪奈は微笑んで少年カリスを見るのだった。
***
うちの子凸枠。
これより先の文章が思いつかなかったらこの話はやめて、里玖雪のボス枠に変更しようかと思います。
しかしどこまで入り込んでいいのか悩んで勇者とーじょー!の流れが電気信号を読んで思いつきました。
〔〕で書かれたのは使う事のないはずだった言ノ葉ですね。
通常魔法よりもSPをかなり使うので疲れやすい事必須です。
言ノ葉で出してるバリアは徐々にSP消費するかと思います。
所持品
・活力の秘水(大)×15
・闘神の秘水(大)×15
呪文については後日うpる予定ですが、おそらく受け渡しできるのは夢ノ国のものだけのほうがいいと思います。
個数に関しては適当ですが、トトから受け取ったままの状態です。
ここまで書いて思ったのは、単にピンチに現れるヒーローのようなシーンが書きたかっただけなんだな。
IFルートから正規?ルートに変更しました。