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【本編後】 心の海にしずむ少女 【隼弥】・前

深海少女アナザー版(vol:KAITO)なる楽曲を見つけて「書きてぇ!」ってなったので書いてみた。
あくまでモチーフなので、割と里玖雪が出張ってる。
メインは隼弥なんですけどね。

続き
「ごめん。実は苦手だったんだ、お前の性格」
 そう言ったのはそれなりに身なりのいい服装をした金の髪を持つ青年だった。
 告げられたのは青年の目の前にいる黒髪をポニーテールの少女。
 スポーティなシャツ、短めのスカートにスパッツ姿。スカートの上からショートエプロンをつけたその姿は青年から見れば村娘の印象を与える。
 青年は少女が住む村の村長息子なのだ。
「……なんで」
「お前よりもその……できたんだ、好きなやつ。だから……友達に戻ってほしいんだ、頼む」
 頭を下げる青年。
 少女はうつむき、ポニーテールを不安げに揺らす。
「……そっか。最近なんか余所余所しいと思ったら……いいよ、サヨナラ」
 背を向け、青年の前から逃げるように駆け出す少女。
 青年は少女を追いかけることなく、ただ立ち尽くすだけ。


心の海にしずむ少女


「こんにちはー」
「あら、ゆきちゃん。いらっしゃい」
 旅を終え、里玖と同棲し始めてから数か月がたったある日のこと。
 雪奈は村にある馴染みの道具屋―弥悠の実家でもある―に来ていた。
「あれ? 今日は弥悠いないんですか? あ、いつものお願いします」
「それがねぇ……」
 注文を受けながら、店番をしていた弥悠の母親が言葉を濁す。
 いつもなら弥悠が店番をしているのだ。
「?」
 弥悠の母親は雪奈の注文品をまとめ、紙袋に入れて渡すとため息を1つ零し、。
「ゆきちゃん、ちょっと時間いいかしら?」
「はい?」


 弥悠の母親に連れられ、雪奈は弥悠の部屋へと来ていた。
 中にはベッドで静かに眠っている弥悠の姿。
「弥悠……!?」
「大丈夫、寝ているだけなの。でもね……」
「もしかして……目を覚まさない……?」
「そうなの。2、3日前に泣いて帰ってきたと思ったら。ね……」
「泣いて……?」
 弥悠の母親の説明に雪奈は眉をひそめる。
 彼女は気が強く、めったには泣かない人だと雪奈は思っていたからだ。
「その日は村長さんのところに届け物があって、お願いしたのよ」
 弥悠の母親曰く、届けに行ってから戻るまでに時間がかかり、戻ってきたと思えば泣いていて、そのまま何も言わずに部屋へ駆け込んだという。
 話を聞いた雪奈は眠る弥悠の傍へ行き、手を取る。
 その手はとても冷たかった。
「弥悠……」
 呼吸も表情も穏やかで安定していて、手が冷たい事と眠り続けていることを除けば変わりがない。
 “何かあったら呼んでね”と言って弥悠の母親は店へと戻ってく。
【悲しみの海に沈んでいますね】
「アレク……?」
 見計らったように降ってきた聞き覚えのある声に聞き返すと、背に白い翼をはやした女性が姿を現す。
 その人は雪奈が契約する光の精霊・アレクサンダーだった。
【その者の深層心理を表すならば、悲しみの海に沈んでいる。と言えるでしょう。言い換えるならば心を閉ざしている状態です】
「悲しみって……?」
【底暗い水色……と言えるでしょう。おそらく失恋か何か、精神が不安定な状態にあります。大切なものを失った可能性が考えられますね】
「失恋……え、まさか……」
【主、心当たりが?】
「うん……」
 しばし雪奈は考え、“また来ます”と弥悠の母親に一声かけてから外へと出ていく。
 アレクサンダーに言われた一言。
 その原因を確認するために雪奈は歩き出した。


「蓮くん」
「ゆきちゃん?」
 雪奈は弥悠の家を出た足で、村長の家へと来ていた。
 庭先に目的の人物を見つけて名前を呼ぶ。
 金の髪を持った青年は自分を呼んだ相手を見て驚いていた。
「夫婦の誓いの時以来だな。元気してたか?」
「蓮くん、弥悠に何か言った!?」
「え?」
「弥悠から付き合ってるって聞いてた。でも、2~3日前にここに来てから弥悠寝込んじゃって」
 青年・蓮は慌てた雪奈の様子と言葉にぎょっとする。
「私もさっき知ったんだけど、眼覚まさないの。弥悠が寝込むほどだもの、蓮くんがらみだと思って。何か知ってる?」
「……たぶん、俺のせいだ」
「え?」
「俺、あいつを振ったんだ」
 蓮の告白に雪奈は眼を見開いて驚く。
 弥悠から聞いたとき、彼女がとても幸せそうに話していたのを雪奈は覚えていた。
「どうして!? 弥悠、蓮くんのことすごく好きだったんだよ!?」
「俺も好きだった。でも、会うたびにあいつがツンケンして、本当に好きなのかわかんなくなって……そしたら別のやつに心が動いてた」
 うつむき、ぼそぼそと呟く蓮に、雪奈は聞き漏らすまいと耳を傾けてまた驚く。
「最近、越してきた住人がいて、親父の代わりに仕事して話してたら、好きになってた。あいつの時とまったく違う気持ちで、愛おしさを感じるんだ」
「……最低……最低、最低―!」
 泣きそうな声で叫びながら、雪奈はこぶしを振り上げて蓮の体を殴りだす。
 蓮は抵抗することなくされるがまま。
「れ、蓮!? ちょっと、やめてよ!!」
 突然に入ってきた少女の声。
 それと同時に蓮と雪奈の間に割り込むように入ってきたのは蓮と同じ金の髪を持つ、ショートカットの少女だった。
「蓮になにするのよ! あんた一体……!」
「いいんだ、凛。ゆきちゃん、彼女が新しい村の住人で、俺の恋人の凛だ」
 雪奈に手を上げようとした少女を止め、腰に手を廻して抱き寄せる蓮。
 とっさの出来事に驚いた少女・凛だったが、照れた表情をする。
「凛、彼女は村の薬師で数少ない召喚士の雪奈さん。薬関係は彼女に聞けばわかるよ」
「り、凛です。よ、よろしくお願いします」
「……蓮くん、私許さないからね」
「……わかってるさ、自分が最低なことをしたくらい」
 ふんっと顔を背け、雪奈はその場を後にする。
 凛はわけがわからないというような顔をして蓮を見ていた。


 その日の夜、雪奈は里玖に泣きながら弥悠のことを話した。
 しゃくりながら話す雪奈を抱きしめ、背中を撫でる里玖。
 ひとしきり泣いて喋り終わったのを見計らい、里玖は雪奈の目にキスを落として尋ねる。
「弥悠はどうしてるんだ」
「……眠ってる。アレクが言うには心を閉ざしてるって……」
「そうか……」
「弥悠、幸せそうだったのに。ひどいよ……」
「雪奈……」
 自分の手で顔を覆い、自分のことのように悲しむ雪奈を里玖はなだめていた。
 そしてどうすればいいのか、眠ってしまった親友をどう起こせばいいのか考えていた。


 翌日、雪奈は再び弥悠の家へと向かった。
 本日も弥悠の母親が店番をしており、先客の対応をしていた。
「いつもありがとうね、隼人君。でもごめんね」
「いえ。早く目が覚めるといいのですが……」
「……おばさん?」
「あら、おはようゆきちゃん」
 聞こえた会話に疑問を感じて声が漏れる。
 それが聞こえたのだろう、弥悠の母親は雪奈に気づいて声をかけた。
「隼人君、彼女が元さんとこの雪奈ちゃん。会うの初めてだっけ?」
「はい」
 弥悠の母親が紹介したのは、左半分だけ前髪を上げた茶髪の好青年。
 さわやかそうだな、と雪奈は青年を見て思う。
「初めまして、隼人って言います。以前、元さんには薬師の弟子としてお世話になってました」
「え、あ、はい。雪奈です……ってお父さんに弟子なんていたの!?」
「あれ、知らなかったんですか?」
 青年・隼人の自己紹介での発言に、雪奈は驚いて隼人をみた。
 弟子がいた、なんて話は聞いたことがなかったのだ。
「あ、でも先生、会っても惚れるなーって言ってたからな。何はともあれ、よろしくお願いします」
「は、はぁ……」
 さわやかな笑顔を浮かべる隼人だが、若干の陰りがあるように見えて、雪奈は尋ねる。
「そういえば、さっき弥悠の話をしていたように聞こえたんですが……知ってるんですか? 弥悠のこと」
「隼人くん、うちの常連さんなのよ。納品してくれるし、買い物もしてくれるし、あの子ったらお菓子も貰っていたのよ?」
「お菓子?」
「俺、食べやすい、飲みやすい薬を作りたくて、先生のいるこの村に来たんです。お菓子もその一環で作ってたりして」
 少し照れながら話す隼人。
 弥悠の母親曰く、最近越してきた住人で越したその日に来て以来毎日通い詰めているという。
 初めは普通の客として接していたが、日をますにつれて話が弾むようになり、時々弥悠がツンとした態度を取り出したとか。
 その話を聞いた隼人は顔を赤くし、“何で知ってんですか?!”と慌てている。
「毎日?」
「そう、雪ちゃんに次ぐお得意様だわ」
「そ、そんなことは……」
「……また、明日も来ますか?」
「あ、はい。納品もあるのでそのつもりですけど……」
「わかりました。おばさん、また来ますね」
 話を聞き、ピンと閃いた雪奈は簡単に挨拶して店を出ていく。
 そして、まっすぐに里玖と住む家へと向かう。
「里玖!」
「雪奈、早かったな。どうし――」
「弥悠を助けられるかもしれない!」
「は?」
 出かける準備をしていた里玖は、帰ってきた雪奈に“どうしたんだ?”と訊こうとしたが、雪奈が興奮気味に告げた “助けられるかもしれない”と言った言葉に遮られて里玖は一瞬固まった。
 雪奈は先ほどまであった出来事を里玖に話す。
 里玖からすれば知らぬ男と一緒にいたことにイラっとしたが雪奈曰く、その男が自分の数少ない友人を助けられる手立てと訊いて、続きを促した。
「で、どうするつもりなんだ」
「隼人さんに今の弥悠を見てもらうの。弥悠、蓮君いたのに隼人さんに気になりだしてたんだと思う。弥悠、気になる人とかいるとツンツンする傾向があったから」
 “だから蓮君にもツンケンした態度だったと思うんだー”と雪奈はいうがいかんせん、里玖には理解しがたかった。
「だが、それがどうして助けられることに繋がるんだ」
「旅の途中、私が心の闇に囚われたことがあったでしょ? あれと同じやり方をすれば……」
「それは雪奈だから成せた業だ。オリジンがお前を心配して行った事。向こうからすれば赤の他人。そこまですると思うか?」
「それは……」
「ただでさえ人に干渉することの少な……まぁ、雪奈に関してはあれだが。常識的には干渉することがまずない。そんな彼らに協力を仰いだところですぐに了解してくれると思うか?」
「うぅ……」
 正論を言われ、雪奈は口ごもる。
 過去に人の心の中、いわば精神にもぐりこむという出来事が雪奈と里玖の間にあり、弥悠のこともそれと同じようにして救い出せるのではないかと雪奈は考えていた。
 しかしそれは根源の精霊であり、精霊を纏める王・オリジンが自分の娘のように思う雪奈を心配し、信頼のある里玖だからこそ行えた業であり、そう簡単には行えない業だと里玖は思っている。
「雪奈、別の方法を考えたほうがいい。精霊はお前のことでしか動かないのは知ってるだろう?」
「うぅ……」
 頭の上に雨雲が浮かび、雨が降っているのが見えるぐらいに落ち込む雪奈。
 里玖は言いすぎてしまったかと内心後悔するが、間違ったことは言っていないと自分に言い聞かせる。
「俺も帰ってから一緒に考える。だから今はほかの作業をしておけ」
「帰ってからって……どこか行くの?」
「魔物討伐の依頼があってな。何、すぐ終わるさ」
 どんよりしすぎて泣き出しそうな雪奈の頭を撫でてから、装備を整え“行ってくる”と里玖は出ていく。
 しょぼんとした表情で雪奈は見送るのだった。


 夕方になり、里玖は無事に依頼を終わらせて雪奈の待つ家へと戻る。
 “ただいま”と言いながら中へ入ると、やたらに上機嫌な“おかえり”が飛んできた。
「おかえりー! 今ご飯並べるから座っててー!」
 雪奈の態度に違和感を覚え、里玖はいぶかしげに雪奈の様子を観察する。
 しかし、観察をするまでもなくあきらかに上機嫌で、里玖は思いつく。
「雪奈」
「んー?」
「お前、誰を言いくるめた」
「!? な、何を言って――」
「出かける前は明らかにしょぼくれていたのに、今はかなり上機嫌……どう考えても精霊の誰かを言いくるめて何かするつもりだろう」
 距離を縮めながら問い詰めるかのように里玖は言う。
 そして、この時ばかりは雪奈のわかりやすい感情に里玖は感謝した。
 鎌をかけるつもりで言ったらわかりやすいくらいに動揺したのだから。
「雪奈」
「……あ」
「雪奈っ」
「アレクが……助けてくれるって……」
「……は?」
「だから、アレクサンダーが力になってくれるって言ってくれたの……」
 雪奈の声がどんどん小さくなっていく。
 はぁ、と里玖はため息をついた。
「実行は何時だ」
「え?」
「お前のことだ、止めても実行するつもりだろう。いつ実行するんだ」
 あきらめにも近い声色で言う里玖に、雪奈の表情がパァッと明るくなる。
 結局甘やかしてしまったな、と思う里玖だった。


 翌日、雪奈は里玖を引き連れ弥悠の家へと向かう。
 前日とほぼ同時刻に来たかいあって、店の中には弥悠の母親と隼人の姿があった。
「隼人さん」
「雪奈さん、おはようございます。そちらは?」
「私と弥悠の幼馴染で――」
「里玖だ」
「あぁ、貴方が。弥悠さんからお話をよく聞きます」
 握手をしようと隼人が手を出すが、里玖はそれに応えず、隼人は苦笑いして手を引き込める。
「あのですね、唐突なのですが……弥悠に会っていただけませんか?」
「はい……はい!?」
「いいですよね? おばさん」
「……そうね。あの子が目を覚ましてくれるきっかけになりそうだしね」
 雪奈の突然の頼みに驚く隼人。
 弥悠の母親も驚いていたが、娘のためになるならばと少し困ったような微笑みをして了解する。
 しばし戸惑う隼人だが、一度深呼吸をすると“お願いします”と真剣な表情で答えた。


 雪奈と里玖、そして二人に連れられて隼人は弥悠の部屋へと入る。
 綺麗に片付いた部屋、ベッドには静かな寝息を立てている弥悠の姿があった。
「弥悠さん」
 傍に近づいて、隼人が見た弥悠の顔は、無表情だった。
 悲しみでも喜びでもなく、何も映し出さない顔を見て、隼人は哀しそうに弥悠を見つめる。
 そんな様子を見ながら、雪奈は右手でこぶしを作り、それを左手で覆い隠すようにした。
 うっすらと、パールホワイトの光が指の間から漏れ出る。
「……深い海」
「海?」
「弥悠の精神状態を言い表すなら、深い海に沈んでいくような感じ。哀しい事あったから……」
「悲しみの海に沈んでいる、ってことですね」
「そう、なる……」
 自分の時だったように隼人を送り込めたら。
 そう考えていた雪奈だが、親友が自分の思っている以上に深く沈んでいる状態にアレクサンダーを通じて改めて知り、難しいと悟ってしまった。
「みゆう……」
 泣きそうな声で呟く雪奈。
 里玖は何も言わず、雪奈の頭を自分に寄せて慰めるように頭を撫でる。
「え……」
「どうした」
「えっと。アレクを召喚する」
「あれく?」
 里玖に離れてもらい、雪奈はパンッと手を合わせてから肩幅ほどに手を開く。
 その手の間に小さな魔方陣が生まれ、乳白色に輝き始めた。
「我に問いかけし者 光をつかさどり 我と契約せし者よ 我が声に応え 現れ給え アレクサンダー」
 乳白色の魔方陣は床へと移り、そこから90cmほどの白い翼をもつ小人が現れる。
 突然の召喚に隼人は驚いていた。
【主、感謝する。そしてこの男がそうなのか?】
「うん。隼人さんっていうの」
【ほぉ……人間よ、そこで眠る者は主の言う状況下にある。だが、目覚めさせる方法はなくはない】
「え……え?」
「え、ほんと!?」
 戸惑う隼人に驚く雪奈。
 里玖も無言ながらに驚いていた。
「てか、この人誰ですか!?」
「あ……ごめんなさい。彼女はアレクサンダー。光の精霊で、弥悠の状態を教えてくれた人です。それでアレク、方法って?」
【夢を媒介にし、心の中へと入りこむ。制限はあるが心に触れるにはてっとり早いだろう】
「そ、そんなこと出来るのか……」
【ただし、それなりに親しいのが最低条件。下手をすれは拒絶反応を起こし、互いの心が壊れかねない】
 アレクサンダーが出した最低条件に、隼人はごくりと唾をのむ。
【それでも、貴様はこの者の心に触れる覚悟はあるか?】
 アレクサンダーから投げかけられた言葉が、まっすぐに隼人へと向かってくる。
 その言葉は研ぎ澄まされたような剣のように隼人へと突き付けられ、まるで刺殺されるのではないかと思わされるぐらいの鋭さだ、と隼人は錯覚しそうになった。
「ど、どうして……俺よりも雪奈さんのほうが」
【主を危険な目に合わせるわけにはいかんからだ】
「アレク!!」
 きっぱりと言いのけたアレクサンダーに隼人は面食らったような表情をし、雪奈は咎めるように精霊の名前を叫ぶ。
【それはさておき、暗い水色がその者の心を占めている。この色は色事での不安を表すを事が多い……主】
「言ってもいいのかな……」
 どうしようかしばし悩み、簡単に事の経緯を雪奈は話す。
 弥悠に恋人がいたことにも驚いていたが、失恋で心を閉ざしてしまったことに隼人はショックを受けた。
「弥悠さん、恋人がいたのか……」
【だが、その状態の者に主が声をかけても反応はなかった。しかし先ほど貴様が声をかけたとき、わずかながらにその者の心の海に波紋が広がった】
「え」
【一番親しくしていた主でなく、貴様の声に反応したのだ。どういうことか、わかるであろう?】
「お、俺の声だけ……」
【望むのならば力を貸す。望まぬならば我は消えよう。その者がどうなるかはわからんがな】
 さぁどうする、と言わんばかりの雰囲気に隼人は黙り込む。
 ハラハラしながら雪奈は何も言わずにやりとりを見ている。
「お、俺なんかでいいんですか」
【むしろ、反応された者だから言っているのだが?】
「……さっき言ってた、制限ってどんなのですか」
 おどおどしていた雰囲気から、きりっと真剣な顔つきをして尋ねる隼人にアレクサンダーはふっと笑いながら口を開いた。

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