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【魔学】休日の過ごし方

リテイク。
内容は変わらないけど、言い回しとかセリフがちょこっとかわってます。
そして、あのときの私はどうかしてた。
紅葉さん、酷い書き方してました。ごめんなさい(土下座)
続き

 とある国の中央都市より離れた場所に、その学園はあった。
 魔の力を持って巧みに操る魔法使い、魔の力を持たず剣や力を巧みに扱う騎士、そして魔の力と剣を巧みに扱う魔法騎士を育てる学園。
 ある者は魔法使いとして、ある者は騎士として、ある者は魔法騎士として勉学に、訓練に励んでいた。
 そんな彼らのある休日のお話。


休日の過ごし方


 魔法学園内にある食堂の1つ、おいしい料理とかわいい服が売りの食堂“エンジェルホーム”の厨房にて、魔法科のブローチを付けた私服にエプロン姿の男女が作業をしていた。
「ヤジマー、生地できたぞー」
「ありがとう。あ、イチゴの準備大丈夫?」
「もちろん。結構甘くてでかめの粒に育ったからきっと映えるぞー」
「それじゃカットの方お願い。て、ショコラ生地できてないじゃない!」
「あ……わりぃわりぃ」
 生地の完成を伝えたのは男子生徒のハヤト・コスギ。
 彼に頼みごとをしたのは女子生徒のユキナ・ヤジマ。
 二人は入学したての頃、親が薬師をしているということで意気投合し、話しているうちに互いにお菓子作りが好きだと知って、時々この食堂の厨房を借りてお菓子を作っては友人たちにふるまっていた。
 そんな二人が作っているのはショートケーキ、それを2種類作ろうとしている。
 ユキナは「もぉ」と言いながら生地を2つに分け、その片方にココアパウダーを入れて混ぜ、ハヤトは近くに置いてあった袋からイチゴを取り出してスポンジに挿む用と上に乗せる飾り用とに切り分けていく。
「あら、おいしそうなイチゴね」
「リイネさん。どうですか? 俺が育てたやつなんです」
 ふいに聞こえた声にハヤトがそちらを見ると、ゆるふわな茶の髪を1つに束ねたエプロンドレス姿の女性の姿があった。
 食堂の運営者であるリイネ・ミカエリスである。
「まぁ、コスギ君が育てたの?」
 “どれどれ~”と1粒、まだ切られていないイチゴを取りぱくりと食べる。
 酸味が抑えられ、ほどよい甘味がリイネの口の中で広がった。
「おいしー。すごいじゃない、コスギ君」
「いやー、たまたまですよ」
「あ、リイネさん! 今日もありがとうございます!」
 泡だて器でショコラ生地を混ぜながらリイネに気づいたユキナは、ぺこっと頭を下げる。
「いいのよ。その代わり、またモデルお願いね?」
「はーい」
「もし何かあったら作業場に来てねー」
 そう言ってリイネは厨房を出ていく。
 どうやら様子を見に来ただけのようだった。
「これは、リイネさんの分も作らんとだな」
「もちろん、そのつもりだったけど?」
 “当たり前でしょ?”と言わんばかりの言い方をするユキナに、“おうふ”とハヤトは声をもらした。
「ほらほら、早くしないと余熱できちゃうよ」
 生地を混ぜ終えたのか、ハヤトを急かしながら生地を金型へと流しいれていく。
「う、うすっ」
 ユキナに促され、ハヤトはイチゴを残りのイチゴを切っていった。


 ユキナとハヤトがケーキ作りに勤しんでいる頃、寮近くにある訓練場で組み手を行っている一組の生徒の姿があった。
 一人は銀糸の髪に高身長の男子生徒、そしてもう一人は長い黒髪を1つに束ね、グローブを手にはめた女子生徒。
 その二人は学園内で有名なリク・ナカセとミユウ・コウヅキだった。
 “セイッ! ハァっ!”とミユウは声を出しながらパンチを繰り出す傍ら、リクは無表情でミユウから繰り出されるそれをひょいひょいと避けている。
「やぁ!」
 リクはミユウから繰り出された拳を避け、その拳を裏手で下に押すとミユウはくるりと一回転し、“きゃあ!?”の声と派手な音を立てて地面に寝転んでしまった。
「あたたた……ちょっと! 今のひどくない?!」
「……手を抜くなと言ったのはおまえだろう。生死を賭けている戦闘ならば死んでいるぞ」
「あんたがチートすぎるのよ! 練習相手すら見つからないくせに。相手してあげてんだから感謝しなさいよ」
「……」
 ふんっとため息混じりにミユウがいうと、リクは無表情かつ無言でミユウから顔を背ける。
 “無視するなごらぁ!”と地団駄を踏むミユウに、リクは無言のまま木剣を投げ渡した。
「へ!? ちょ、ちょっと!?」
「相手、してくれるのだろう?」
「ま、待って! 私これっ!」
 さながら、悪人のごとくにやりと笑いながら木剣を構えミユウに突っ込んでいくリク。
 ミユウは慌てて木剣を持ち、リクからの激しい攻撃を防ぐ。
「苦手っ、だって、言ってるでしょうが!!」
 力を込めてリクの木剣を押し返すがやはり男女の差は歴然で、ミユウは簡単に押し倒されて剣先を突き付けられてしまった。
「だからこれは苦手だって言ってんでしょうが!!」
「ふんっ」
「もー可愛くないわね、まったく」
 木剣を払いながらそっぽを向くリクに愚痴をもらすミユウ。
 そんな時、ふっとミユウの耳に聞きなれた声が入ってきた。

“ヤジマ、オーブンの準備完了ー。いつでも行けるぞー”
“はいはーい。それじゃ焼き入れしまーす”

「あー……これは……」
 その声はこの場にいないはずの親友たちの声で、どうして聞こえてきたかの原因がミユウにはすぐにピンときた。
「シルフー、伝えてくれるのはありがたいけどさ。それやると怒られるのはあんたの主人だからやめなさいって、前も言った気がしたんだけど……?」
 そうミユウが言うと空気が震えて、親友たちの声は聞こえなくなる。
「主人想いなのはいいけれど……精霊ってこう、命令とかなしに勝って動いていいものなの? てかそもそも精霊ってこんなに人間に入れ込むものなの?」
「……」
「……なんか言いなさいよ」
「俺に振られても困る」
 お互い黙ったままで、リクに答えを求めるミユウだがもちろん帰ってくるはずもなく。
 そのまま立ち尽くすのもあれだと、ミユウは片づけを始める。
「今日はもう終わり終わり。ユキナがおやつ作ってくれてるし、場所はきっとエンジェルホームかなー」
 “うーん”と体を伸ばして、あちこちの節々をコキコキと音を鳴らす。
「今日は何かなー。楽しみだなー」
 にこにこしているミユウに対して、リクは何も言わずにそっとどこかへ行こうとした。
 それに気づいたミユウはリクの首根っこを掴む。
「ちょっと、どこ行く気よ」
「別に俺はいなくてもいいだろう」
「ダメに決まってるでしょ! ユキナがあんたの分まで用意してたらどうするのよ。泣くわよ?」
「……それは、困る」
「でしょ? ほら行くわよ」
 片づけをすませ、半ば強制的にミユウはリクを連れてエンジェルホームへと向かうのだった。


 一方エンジェルホームの厨房では、無事にスポンジも焼きあがって、最後の工程に入っていた。
 4号サイズのケーキが2つ。
 それぞれに生クリームとショコラクリームをむらなく塗りつけ、最後にハヤトが切ったイチゴを載せていた。
「おーしっ、完成っと。ヤジマ、お茶の準備はー?」
「あとちょっとー。切り分けお願いしてもいい?」
「あいよ」
「ちゃんとリイネさんの分作ってよー?」
「わーかってるって」
 お茶の準備をしながらハヤトに釘をさすように言うユキナ。
 忘れないうちに、とハヤトはそれぞれを8等分に切り分け、一切れずつを先に皿へと載せる。
「忘れないうちに届けてくるわ」
「ありがとう。お願いね~」
 ハヤトがリイネにお手製ケーキを届けている間、ユキナは紅茶とコーヒーの2種類を用意していた。
 むろん、コーヒーはリク用だ。
 あらかた準備を終えたと同時にカウンター越しに扉の開く音が聞こえた。
 ユキナが振り向くと、そこにはまだ連絡を入れてない親友たちの姿があった。
「あれ、ミユウにリク! どうし――」
「風のうわさでねー。おいしいおやつが出来ているらしいから来ちゃった」
 ユキナの話を遮って理由を話しながらバチンとミユウはウインクする。
 リクはそっぽを向いていたが、ユキナを見て少しだけ微笑んだ。
 ユキナはというと、面食らったように驚いていたがミユウの言った〔風のうわさ〕にピンとくる。
「まさか……またシルフね……!」
 もぉ……とため息をつくユキナ。
 どうやら以前にもユキナに内緒で力を使っていたことがあるらしい。
 ミユウはまぁまぁと言いつつ、早く食べたいと言うような眼差しでユキナを見ていた。
「あ、先輩方! ヤジマ、連絡早いなー」
 ちょうど良いタイミングでハヤトが戻ってくる。
 それを見て、ユキナはリクとミユウに適当に腰かけるよう言い、お茶の準備を進めた。
「今日はケーキを作ってみましたー。イチゴはコスギ君が育てたやつなんだよ」
「量は少ないけど、酸味控えめのが出来ました!」
「へー! すごいじゃない、ハヤト!」
 “いただきます!”と手を合わせ、目の前に並べられたケーキを取ってパクリと一口で食べるミユウ。
 リクにも皿が出ているが、甘いものが苦手なのかケーキには手を付けずにいた。
 おいしそうに食べるミユウを見て、ニコニコと笑うユキナ。
 ハヤトはというと、味よりもミユウに名前呼びされたことが嬉しかったらしく、隠れてガッツポーズしていた。
「リクにはこれね」
 とユキナは入れたてのコーヒーを差し出す。
 リクは無言で受け取り一口含んで一言、“うまい”とだけいう。
 それがユキナには嬉しかったのだろう、笑顔がいっそ明るくなった。
「今度はさ、魔法科の双子ちゃんとか騎士科(うち)にいる兄弟とか、魔騎士科にも双子いたいよね? あの子たちとかもお茶してみたいよね」
 もぐもぐとケーキを食べながらミユウが言う。
 あまり交流できないからせいもあるのか、同時期に3組も双子が入ってきたのが話題を呼び、興味を持っていたようだ。
「そしたら、魔法科のサツキ先輩とかも呼んでみたいな。騎士科に強い人いたよね? リクと同じ銀髪の」
「あぁ、キサラギ先輩? お菓子とか好きそうなイメージはないけどな」
「勉強会とか練習会とか、ちょっとした休憩でもいいかならお茶しながらお話とかしてみたいんだよね」
 ワイワイと話に花を咲かせるユキナとミユウ。
 その様子をそっと見守るリクとハヤト。
 男子組は互いにそこまでの接点がなく、リクについてはユキナ以外に心をあまり開かないという面倒な性格の持ち主故、どう話題を出そうかとハヤトは考える。
「……あ、あの」
「……?」
「こ、今度、甘くないやつ作るんで、良ければ好きな食べ物、教えてください」
 勇気を出してリクに話しかかるハヤト。
 話しかけられ、一度は気にするリクだがそれほど興味を引くような話題ではなかったらしく、ハヤトに向けられた視線はまたユキナへと戻された。
 むろん、無言で、である。
 そんな態度で返されたハヤトは内心、“そうですよね、わかってましたー!”と涙を流しながら思うのだった。
「あ、ちょっとリク。ハヤトをいじめないでよね」
「……ふんっ」
「まぁ! そんな態度取らなくてもいいでしょ?!」
「まぁまぁ、ミユウ落ち着いて。リクもそんな風に返さないで……」
 それから、4人はリイネが来るまでお茶の時間を楽しむのだった。

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