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11/11

ポッキーの日
続き

 俺、小杉隼人、王華高校2年生。
 俺のいるクラスでは規模はそこそこだがファンクラブが作られる人物がいる。
 その人はいい意味でも悪い意味で注目を浴びてる矢島雪奈。
 矢島とは同じ部活(家庭科部)に入ってるから、部活動がらみで仲良くなれた、と思ってる。
 べ、別に矢島を狙ってるとかはないぜ?
 矢島には本人は隠してるつもりだろうけど、中瀬里玖先輩と付き合ってるって聞くし。
 俺が気になるのは、部活中によく顔を出す風紀委員の香月弥悠先輩。
 黒髪のポニテで、なんていうんだろうか、風紀の腕章をつけて颯爽と歩く姿が凛としてて、でもお菓子好きっていうのがグサッと胸に来た。
 いや、お菓子好きって思ったのはよく部活中に顔を出しては矢島からもらってるのを見てなんだよな。
 それで、俺は矢島に相談してみたんだ。どうしたら香月先輩と仲良くなれるか、って。
 そしたら驚いた顔して「え、弥悠と?」と返してきたもんだからいろいろ聞きだした。
 まぁそのあと試行錯誤して、餌付けに近い形で仲良くなれたんだけど……
 俺としてはやっぱり異性として見られたいが、現実は『お菓子をくれる後輩』としか見れもらえないわけで……
 で、また矢島に相談したのだった――

「え、またすごい質問してくるね小杉君……」
「でもさ、日は浅いとはいえ、なかなかさ……お菓子ばかりねだられるのも嫌なんだよ……」
「まだいいほうじゃないかな? だって、名前呼びする男子って小杉君だけだよ?」
「それは嬉しいけど……ちょっとは甘酸っぱい関係になってみたいぜ…」
「甘酸っぱいって」
 1つの机で向かい合うように話す俺と矢島。
 ちなみに机の上には次の活動で作るためのレシピ本が広げられている。
 俺の話を聞いて苦笑してる矢島がちょっとうらやましい。
 俺は声を潜めて聞いてみた。
「なぁ、やっぱ中瀬先輩は仲良くやってんの?」
「な!? なに言ってるのよ小杉君!?」
 俺の質問に矢島は顔真っ赤にしてレシピ本をバンバン叩いてくる。
 こう見ると、やっぱり乙女だよなとか思ってしまうわけで。
「かわいいよなー……」
「!?」
 ガンっ
「い、て……」
 ちょっと悪乗りしすぎて本の角で叩かれ思わず撃沈。
 さすがに痛かったです、はい。
「あ、ご、ごめん小杉君!?」
「いや、俺が悪かった……まぁ、まじめな話、香月先輩を落とすためにはどうしたらいいんだろうか?」
「う~ん……やっぱりお菓子をあげるのが一番だとは思うんだ。あとは話するとか。小杉君、お菓子上げるだけでお話しないでしょ?」
「ま、まぁな……」
「でも仲良くなってるし……お菓子上げるときの方法をちょっと変えるとか?」
「渡し方を変える、か」
「弥悠、風紀委員の仕事でいつも忙しいし。ねぎらいじゃないけど、“お疲れ様”っていうと喜ぶかも?」
「そっか……わかった、ちょっと考えてみるよ。あんがと」
「ううん、大丈夫! で、次作るやつはどうしよう?」
「あぁ、ちょっと早いけどクリスマス系統でいいじゃないかな? 先輩に言ってみよう」
 一応打開策を考えながら先輩たちから出された課題(次の活動時のレシピ探し)をしていた。


 それから数日後。
「お、今日も作ってるね」
 部活中、見回りに来た香月先輩が窓腰に声をかけてくれた。
 枠に右肘をつき、手を頬にあててにやにや笑っている。
 たぶん、お菓子をもらいに来たのかもしれない。
「こんちは、香月先輩」
「こんにちは。今日は何を?」
「マカロンを作ってます。今は焼いてる途中ですけど」
「へぇー……いつごろ焼ける?」
 そう聞いてきた先輩の目が輝いているように見えた。
 これは……狙ってる。
「あ、上げてもいいですけど……今回は条件付けます」
「ん? 何々?」
 俺の言った“条件”と言う言葉に小首をかしげる先輩。
 うん、かわいいです。かわいすぎます。
 胸をドキドキさせながら、俺は“ちょっと耳を貸してください”と言って小声で条件を伝える。
 すると先輩は驚いた顔して、
「ば、ばかじゃないの!?」
 と、両手で思いっきり叩いてきた。
 思わず手でガードしてしまう。ちょっと無謀だったかな、と反省。
 そんなやり取りをしていたせいか、部長たちが「痴話喧嘩なら外でやってちょうだい」とか言い出すもんだから香月先輩が“違うわよバカ!”と言いかえす。
「まぁまぁ、焼きあがるまで時間あるから外で話し合ってきてよ。ちょうど階段の踊り場近いしー」
 と、矢島がニコニコとで笑顔で俺を調理室から追い出した。
 協力……してくれたらしい。
 一応、ほかの部員には聞こえないようにするため、すぐ近くの階段まで移動する。
「ば、ばかなこというからお菓子がもらえなくなったじゃない!」
「だ、だって俺、いつも先輩に上げてばっかですもん。ちょ、ちょっとぐらいは……」
「てかほんとバカじゃないの!? 何が“ポッキーゲームしてくれたら”とかよ、あほでしょ!?」
「お、俺だっておいしい思いしたいです! 俺、香月先輩が、いや、弥悠さんともっと話したいです!」
「!?」
 あ、あれ……?
 俺、なに口走った?! これ告白まがいだよな!?
 自分の言ったことに気づいてもあとの祭りで、香月先輩は思いっきり顔を赤くしてる。
 ぶっちゃけ、なかなか見れない表情であったが―――
「馬鹿云うんじゃないわよ!!!」
「うぐっ……」
 見事な正拳突きが俺の腹にクリーンヒットし、俺はその場に崩れ落ちた。
「は、隼人君が悪いんだからね!!」
 そう言って去って行った香月先輩を見送って、ぷつりと意識が途切れた。


「……くん、小杉君」
「んぁ……矢島……?」
「大丈夫? 弥悠が真っ赤になりながら小杉君が死にかけてるって言ってきたから……」
 肩を揺さぶりながら声をかけてきたのは矢島だった。
 どうやら、俺は十数分ばかり気を失っていたらしい。
「いったい何を言ったの? 弥悠があんなに顔を真っ赤にさせるの、初めて見たんだけど……」
「あぁ……」
 立ち上がり、調理室に戻るまでになにがあったのかを矢島に話すと、“あーそれはそれは…”と若干憐れむような目を矢島は俺を見るのだった。

***
11/11はポッキー&プリッツの日と言うことで。
仲良くしたいがあまりに空回りして先走ってしまった隼人君。
しばらくは口をきいてくれなかったけれど、後輩から異性として意識し始めた弥悠さんがいましたとさ。

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