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邂逅(お子さんお借りしました)

湧点さんと紅葉さんのやりとりを見ていて混ざりたくなった産物。
しかし、雪奈も里玖も精霊等々の力がなければ時空間の移動は難しいので、夢の中(ただし雪奈のみ)での交流スタイルで書いてみました。
ただ……妄想が先走りすぎて本家さんのイベント後的な時間軸で書いてしまったという……って、違うことしてたらうpされてた…!
えぇぇぇ…間違ってたらごめんなさい!!!

続き
 ふと、少女は目を覚ました。
 そこは、完全な闇とも光ともいえない狭間の空間。


邂逅


(ここは……どこだろう……)
 ふわふわとまどろみに浸かっているような不思議な感覚。
 しっかりと目を開けて少女、雪奈は自身を確認する。
(透けてる……私、死んじゃった……?)
 彼女の視界に入ってきたのは透けた自分の掌。
 次にあたりを見回す雪奈。
 周りにはいろいろなオブジェが浮いており、その中で佇む人影を見つけた。
 赤いマフラーに黒いロングコートを着た、褐色肌と銀色の髪を持つ眼鏡をかけた男。
 彼女の眼に狂いがなければ、その男の耳はまるで狼のような形だった。
 しかし、今の彼女に男の容姿など関係ない。
 気づかれるかどうかも定かではないのだから。
(銀色の髪……里玖と同じだ……)
 ふよふよと浮かびながらどうすれば近づけるかと考える。
 すると、男が彼女を捉えるように顔を向けた。
「……何をしている。どこから入ってきた」
 発された言葉に彼女はきょろきょろと周りを見る。
 即座に“そこのお前だ”と男に言われ、雪奈は自分が見えていると自覚できた。
「気づいたら、ここにいました。ここはどこですか?」
 空気を震わせ、言葉が発される。
 のんきなことに、“あ、ちゃんと声でた”などと考える。
 しかし、男は訝しげな表情で雪奈を見て、沈黙するだけ。
「……ここには何もない。今すぐ立ち去ることだ」
「はぁ……」
 拒絶とも取れそうな言い方に雪奈はそれしか答えられない。
 しかし帰れと言われたところで、帰り方はおろかどうやってここに来たのかもわからないのでどうすることもできない。
 ふよふよ浮いているだけではいけないと思った雪奈は男のそばへと降り立つことができた。
「立ち去れ、と言ったつもりだが」
「どうやってここに来たのかわからなくて、帰るに帰れません」
「……」
 雪奈は男の前に立つ。
 男のほうが身長が高く、ゆうに頭1つ分ほどの差があるだろう。
「ん?」
「……」
「お兄さんと私、それ以外にあと3人?の気配がする」
「…」
 ほんの一瞬、男の気配がぶれた気がした。
 しかし雪奈は気づかず“うーん…”と腕を組んで悩んでいる。
「2人は……動いてないから寝てるのかな? あとの1つはそばにいる感じがするし……」
「……どうしてそう思う」
「お兄さんの後ろから感じたんです」
 そう雪奈は言うも、男の後ろにあるのは空白の空間のみ。
「なにも見えないけど、居る気がしたんです。あ、だからお兄さんは“帰れ”って言ったんですね」
「……」
「お兄さんにとって大切な人がいる…のかな? 守る人がいるんですね」
「……だったらどうする」
「何もしませんよ? あ、ただ、ちょっと怖い気配が……」
 警戒をあらわにする男に雪奈は少しだけ身を小さくする。
「お兄さんじゃなくて……もう1つの人かな……なんだかさっきまで怒っていた感じ」
(この娘……何者だ)
 一層警戒を強くする男。
 雪奈は“あっ”と声を出して手をたたいた。
「私、雪奈って言います。お兄さんはなんていうんですか?」
「……貴様、何者だ」
「えっと……召喚士です。召喚術士って言えばいいのかな……?」
 “う~ん、う~ん”と悩みながら答える雪奈に男は黙ったまま彼女を見る。
(だから、なのか……?)
「って、そうだ。ここってどこなんでしょう? まだ聞いてないですよね?」
「……どこでもない。むしろ、どうやってここにたどり着いたのか聞きたいくらいだ」
「どこでもない…? う~ん、狭間的な場所なのかな?」
 雪奈からの問いかけがほとんど疑問形でしかない。
 里玖は無口に近いが、いつもそこそこに会話がなりたっているので今回のケースに雪奈は頭を悩ませる。
「……雪奈、と言ったな。今は思念体のようだが、あまり近づかないほうがいい」
「それは、もう一人の人が怒ってるから、ですか?」
「……」
「沈黙は肯定……何度も言ってくださるということは、相当怒ってるか怖いってことですね……」
 う~んと唸っていると、雪奈はパっと顔をあげあたりを見回す。
「里玖…?」
「どうした」
「今、声が……」
 雪奈の言う“声”は、男には聞こえてこなかった。
 雪奈に連なる者の声だからなのか、彼女の幻聴なのか、それを知る術を男は持っていない。
 ただ、男がわかったことは――
「どうやら帰る時間のようだな」
「え? あっ」
 男の言葉に雪奈は下を見ると、透けていた体が足から少しずつ消えていた。
「よくわからないまま帰るなんて……ねぇ、お兄さん、この先にお兄さんの知り合いがいるの?」
「……あぁ」
「その人たちって、一人は怒ってて、あとの2人は寝てるの?」
「…あぁ」
 残された短い時間を使って、雪奈は少しでも情報を拾うとした。
 再び会うことなどありえないはずなのに。
「寝てるのって、何かの病気? それとも――」
「貴様に話す義理などない」
(触れてほしくない内容……)
 男の眼光がギラリと光り、雪奈は息をのむ。
 雪奈の体は、肩まで消えていた。
『っ…お、お兄さんに、その人に、その子たちに、善いことが、幸せなことが訪れますようにっ!』
 彼女の体が消えると同時に、願いを込めた声が言の葉が波紋となってその空間を震わせた。
(言霊だとっ……油断していたっ!)
 男は踵を返し、その空間から姿を消した。


「――っ」
「ん……?」
「雪奈っ」
 呼ばれた声に、雪奈はゆっくりと瞼を持ち上げる。
 彼女の視界に入ってきたのは心配の色を浮かべる銀色の髪の少年。
「りく……?」
「おはよう。やっと、起きたな」
「うん」
「3日も眠ってたんだぞ」
「そうなの?」
「あぁ……心配したんだからな」
「ごめん、でも、生きてるね」
「あぁ」
 少年の、里玖の安心した声に雪奈は笑顔で答えていた。
 彼女はもう覚えていないのだろう、あの空間での出来事を。


***
言い訳
雪奈の時間軸はいまだ書き終わっていない本編の終わり間際だったりします。(長く寝てる場所が見つからなかった…)
それと、雪奈は召喚士ですが、言霊的な力を持っているという隠し設定を持ってます。(まだ出してないだけ)
その力を持っていることを知ったのが、本編終わり間際…この状況になる少し前なので無自覚の発動でした。
『』で書かれた部分がそれですね。
ちなみに、雪奈は直感で言ったので多分ドキリとさせた…と思います。
ひどい妄想、すみませんでした……
あ、結局カイさんの名前1度も出てない……

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