元ネタは診断メーカーの3つの恋お題より
それは梅雨明けの近い6月下旬。
ひっそりこっそりお付き合いしている里玖と雪奈。
そんな2人は本日、雪奈宅でのんびりとおしゃべりをしつつ、期末に向けてそれぞれ勉強をしていた。
「ねぇ、里玖。これって……」
「ん? あぁこれは……」
わからないところを聞こうとしたその時、
ゴロゴロ ゴロゴロ
「!?」
「雷か…?」
遠くのほうで音が聞こえたかと思うと、雪奈は肩をすくませて驚く。
里玖はと言うと、冷静に窓の外をみた。
リビングから外を見ればいつの間にか暗くて、雨粒がつき始めていた。
(降ってくるか……)
そう里玖が思った途端、ザーッと雨が降り出した。
雨脚はどんどん強まっていき、やがてはバケツをひっくり返したような豪雨に変わる。
それに伴って雷鳴も大きくなり、響いてくるのは轟音と錯覚するような大きさだった。
「梅雨明けか……それにしてはひどいな。なぁ、ゆき……」
話しながら雪奈に視線を向けた里玖は思わずぎょっとした。
なぜなら目の前にいた雪奈の姿はなく、勉強していた机の下に隠れていたのだから。
「ゆ、雪奈…? 大丈夫か…?」
「だ、だいじょうぶじゃ……」
ぴしゃーん
「ひゃぁぁ!?」
雷鳴が鳴るたびに耳を強くふさぎ、身を縮こまらせる雪奈。
高校生と言えど、いくらなんでもこれは大袈裟すぎると思った里玖は雪奈の名を呼ぶ。
しかし固く耳を塞ぐ雪奈にその声は届かない。
里玖は机の上にあるものを簡単に片付け、それを雪奈にぶつからないように持ち上げて余所に置く。
その時、また雷鳴が響き渡った。
「きゃああああ!!」
「雪奈」
今にも泣きそうな声で叫ぶ雪奈を里玖はそっと抱き寄せて包み込み、ゆっくりと背中をさする。
「大丈夫、すぐに終わるから。そんなに怯えるな」
里玖の腕の中で耳をふさぎ、ぶるぶると身を震わせる雪奈。
それだけ雷が怖いのだろうか。もう試験勉強どころではない。
「雪奈」
「………い」
「ん?」
「おね……がい……」
「あぁ、言ってくれ」
ギリギリ聞こえるぐらいの微かな声で雪奈が呟く。
聞こえた呟きに里玖は答えると、雪奈の声が少し大きくなった。
「……らないで……」
「ん?」
「かえ……らないでぇ……」
ぴしゃーん
「ひゃぁぁぁぁぁ!!」
雷鳴がなると同時に、別の意味で里玖にも雷が落ちるのだった。
***
ツイッターの3つの恋のお題で出た1つを書いてみた。
……が、ものの見事に色気のない話になってしまった。
お題の方は「今夜は帰らないで」だったんですけどねぇ。
裏話をすれば、雪奈の母(故人)は買い物帰りで雷の中、交通事故で亡くなったというトラウマ的な物を抱えてるからだったりする。
もちろん里玖は知りませんよ。