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後日譚

1つ前の話の後日譚

続き

 ある日の屋上。
 問題を起こしたFCの対処に追われていた弥悠は約1週間ぶりに雪奈とお弁当を食べていた。
 毎日一緒に登校している弥悠と雪奈だが、あのお泊りの間は別々に登校していたようだ。
「ねぇねぇ雪奈。ちょっと前一緒に行けないって言ってたじゃん。あれってなんだったの?」
「えっとね、父さんが一週間ぐらい隣の県に出張で家にいないから、父さんの知り合いのとこに泊ってたの」
「へぇ。どこどこ」
「前に案内した喫茶店、覚えてる?」
「喫茶店……あぁ、あのお店。そっか、近いもんね」
「うん。その時にね、里玖も泊りに来たの」
「ほぉ!」
 雪奈から里玖の名が出ると、弥悠はニヤニヤしながら“どうどう? 進展した?”と聞いてくる。
「えっと……一緒のお部屋には、泊ったよ?」
「! もうそこまで進んだわけ!? もう公言しちゃいなさいよ!」
「そ、そこまでって……何にもなかったよ?」
 興奮する弥悠に雪奈はおどおどしながら言う。
「は?」
「だから、普通にお話しして同じ部屋で寝て、学校通ったぐらいだよ……?」
 “同じベッドで寝たりはしたけど”と小さな声で付け加えて。
 弥悠はあっけにとられたような表情をして雪奈を見ている。
「そ、それ、ほんとの話……?」
「う、うん」
「本当に、何にもなかったの?」
「うん……」
 すごい形相で迫りくる弥悠に雪奈はただ頷くだけ。
 答えを聞くや否や、弥悠は俯いて肩を震わせる。
「み、弥悠……?」
「……ちょっと説教してくる」
「!? な、何言ってるのさ!」
「半年近く付き合って何の進展もないってどんだけヘタレなのよ! たとえ雪奈が良くても私がよくないわ!」
 そう言うと弥悠は弁当を片付け、校内へと戻って行ってしまった。
「み、みゆう……」
 おいてけぼりを喰らった雪奈は泣きそうな顔をしていた。


 場所は変わり、弥悠と里玖の所属する3年5組。
 里玖は自分の席で弁当―しかも梨依音特製の―を食べていた。
 いつもなら弥悠と雪奈と人気のない―主に屋上―で過ごすのだが、今日は弥悠から“ガールズトークするから来ないで”と言われてしまい、黄色い声が聞こえるなか一人でもくもくと弁当を食べていた。
「里玖!!」
 バンッと扉が開くと同時に弥悠の声が響く。
 食べることに集中していた里玖は思わず肩をびくっとさせた。
「こ、香月……どうしたんだ、雪奈と食べるんじゃなかったのか」
 カツカツと音が聞こえそうな歩きかたをして近づいてくる弥悠に里玖はどうしてか恐怖を感じていた。
 それもそうだ、弥悠の顔は怒っているのだから。
「中瀬里玖、放課後に生徒会準備室に来ること。いいわね」
 そう弥悠が言い放つやいなや、周りがわざついた。
 FCの女子たちは“どうして中瀬君が…”と囁き合い、一部の男子は“中瀬何したんだよ…”と囁きあう。
 生徒たちが恐れる“生徒会準備室”は別名“風紀部屋、説教部屋”と呼ばれている。
 使用目的は風紀委員達の会議に使わるが、主にFCや違反者への説教が主な為。
 よほどのことがない限り、呼びだされることがない部屋なのだ。
「あ……あぁ、わかった」
「いいわね、待ってるわよ」
 そう言って弥悠は乱暴に自分の席へと座る。
 ちょうど、チャイムがなった。


 放課後、里玖は言われた通りに生徒会準備室に来ていた。
 ノックして入れば弥悠が椅子に腰かけている。
「来たぞ、なんだ」
「とりあえず座って」
 ぶすっとした言い方をする弥悠に里玖は黙って座った。
「で、用事はなんだ。この部屋に呼びだすなんて」
「他の人たちには聞かれたくなかったの。特にFCには」
「……なんだ」
「あんた、雪奈とお泊りしたんだってね」
「ぐふっ き、聞いたのか……」
「えぇ。口だなさいつもりでいたけど、あまりのへたれっぷりには呆れたわ」
 はぁ~っと大げさにため息をついていう弥悠。
 里玖は若干呆れている。
「あんた達、付き合い始めて何カ月よ。おそらくキスまでは進んでるんだろうけど、それから先に行かないとかどんだけヘタレなの! 健全な男子学生でしょ?!」
「な、お前には関係ないだろ!」
「無いわよ! でも好きな子目の前にして手出さないとかどゆことよ!」
「し、仕方ないだろ! 人の家でやましいことできるか……! それにまだ半年ぐらいだぞ!」
「もう半年じゃない! それだけ付き合えば十分前に進めるじゃない」
「か、勝手なこと言うな! がっついて、雪奈を傷つけたくないんだよ……」
「ほぉほぉ。そうゆう気はあるわけね」
「それに、そんなことがあったと知られれば雪奈に害が及ぶ。特にFCから。FCは雪奈を目の敵にしているから、雪奈を徹底的に潰しにかかると思う……」
「(しれっとスルーしやがった)まぁ、あり得なくない話ね。でもね、そのための風紀委員がいるのよ。個人を叩くFCには制裁を与えるわ」
「だか、害が及ぶのは嫌なんだ……」
 互いに声を荒げ、言い合うと里玖は項垂れて想いを吐き出す。
 シカトを決め込むほどうざったいFC達だが、彼女らの執念が恐ろしいのは彼が一番よくわかっている。
 だからこその行動だと彼は言った。
「雪奈を守るため……聞こえはいいけど、結局はへたれてるってことじゃない」
「……」
「まぁ、いいわ。雪奈がつぶされるなんて私も嫌だもの。でも、あんたに雪奈への気持ちがちゃんとあるってわかってよかったわ」
「当たり前だ。好きでなければ一緒にはいない……って何言わせるんだ!」
「あははっ。ほんと、あの仏頂面がここまで丸くなるとは思わなかったよ」
 話していて恥ずかしい事まで話していたと気付いた里玖は顔を赤くしていた。
 弥悠はというと彼の本心がわかって笑っていた。
 彼女も彼女なりに雪奈を心配していたようだ。
「まぁ、ことが進んだら教えてよ。赤飯炊くから」
「誰が教えるか!!」


 そこの頃――
(里玖……大丈夫かな……弥悠も無茶言ってなきゃいいけど……)
「「雪奈先輩、メレンゲ出来ました!」」
「それじゃぁ、生地をそのシートの上に……」
 家庭科部でマカロンを時乃双子と作りながら考えていた。


 今日もどうにか平和な日々を過ごす彼らがおりましたとさ。


***
正直載せようか迷いました。
結構グダグダになってしまったので。
まぁ、前の話で頂いた反応を感じて、里玖の心中を書いてみました。
本編よりも健全だぞと言いたかったけど、結局変わらなかった…

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