出会ったから使い方を聞いたよ。
#うちの子がヒトガタ携帯だったら(通話編)
「香月、電話の時はどうするんだ?」
 「ユキナに掛ける相手の名前を告げて。あとは今までの携帯と同じだから。でも電話帳の写しがまだだったわね。携帯貸して」
  促されるままに今まで使っていた黒の携帯を香月に預ける。
  香月はユキナと呼んだ携帯を呼び寄せると何かのコードを取り出して、彼女の首筋に差し込むやいなや近くにあったパソコンにその反対側を指して繋げた。
 「数はそんなにないのか……すぐ終わるから待ってて」
  平然としてる香月に俺はなにも言えなかった。
 「ん? どうしたの?」
 「おま、それ……」
 「あぁ、首筋に接続用のジャックがあるのよ。なに? 驚いた?」
  柄になく動揺してしまい、香月に笑われてしまった。
  ヒト型はよくわからん。
 『! マスター、 ジーベルミカエリス から通話です』
 「あらちょうど良いわね。試してみたら?』
  ユキナの口から知り合いの名が出て、香月はほらほらと言わんばかりに出ることを促す。
  どうしたら出られるのか考え、
 「……繋げてくれ」
 『はい。 もしもし、里玖か?』
  短い答えのあと、聞き覚えのある知人の声がした。
  見た目少女から男の声がするのは変な感じだ。
 「こんにちは、ジーベルさん。どうかされましたか?」
 『リイネが新作を考えたから近々来て欲しいって言っていてな。ついでだから飯食いに来てくれないか、と思ってな』
 「お誘いありがとうございます。そうですね、近いうちに」
 『あぁ、待ってるぞ。 通話を終了します』
  ジーベルさんの声からユキナの声に戻る。
  通話を終えて、一つ思うことがあった。
 「香月……Bluetooth的なものはないか?」
 「あるけど、使うの?」
 「出先でこの方法はきついものがある……」
  まるで人形に話しかけているようで、精神的にきついものがあったなぞ言えるわけがない。
  ユキナはきょとんとした顔をしてこちらを見ながら小首を傾げていた。