お題をいただきましたので書いてみました。
しかし戦闘シーンが苦手です←
とある国の中央都市より離れた場所に、その学園はあった。
魔の力を持って巧みに操る魔法使い、魔の力を持たず剣や力を巧みに扱う騎士、そして魔の力と剣を巧みに扱う魔法騎士を育てる学園。
ある者は魔法使いとして、ある者は騎士として、ある者は魔法騎士として勉学に、訓練に励んでいた。
年度が変わって早1か月ほどが経ったある日のこと。
騎士科と魔法騎士科4年生の模擬訓練に、双方の上位ランク者が訓練の相手をしてくれる、という噂が流れていた。
「おーい、リクー」
「……なんだ」
「聞いた? 模擬訓練のこと」
授業合間の休み時間、次の授業のために移動していたリクを見つけたミユウが声をかける。
ミユウはそっけないな、と思いつつ言葉をつづけた。
「毎年、上がってきた4年生に模擬戦ふっかけて指導するってやつ」
「……あぁ、俺たちもやったやつか」
「思い出した?」
「あぁ。だが俺には――」
「でね、その参加者にあんたと騎士科のキサラギ君の名前があったのよ」
そうミユウが言うとリクの眉間に深いしわがよる。
それは一目瞭然なほど“なんで俺が”と不快感を表していた。
「あー、何でって顔してるね。たぶん魔法騎士科の上位だからじゃないのかな? キサラギ君も成績いいから上位者だし」
「俺は聞いて――」
「おぉ、ここにいたのかナカセ」
「あ、先生」
魔法騎士科を表す白黒の訓練着に腕章をつけた教師が2人の傍へとやってくる。
リクは嫌な予感しかしなかった。
「毎年騎士科と魔法騎士科の新4年生に稽古をつけてるんだがな、今年はナカセとコウヅキ。もちろんほかにもいるが、頼まれてくれないか」
「!?」
「え、私もですか?」
「あぁ。女子で格闘術を扱う者は少ないからな」
“じゃ、頼んだぞ”と言って教師は2人から離れていく。
リクはガクリとうなだれ、ミユウは「まぁ、どんまいだね」と苦笑しながらもらした。
そして当日。
騎士科から10人、魔法騎士科からも10人の計20人の上位ランク者と新4年生がずらーっと並ぶ鍛錬場。
騎士科の教師が大まかな説明をしている間、リクは気だるそうに説明を聞き流し、それを見た騎士科のカイ・キサラギがリクを睨み付け、リクとカイの間にいるミユウがまぁまぁと二人をなだめる。
そんなこんなで説明もおわり、彼らはそれぞれグループに振り分けられた。
リクが担当する生徒の中に、一際目立つ鮮やかな紅い髪。
「……では、一人ずつ。そこの赤いの」
特に制約もなかったためリクは一人ずつ相手にすることにした。
適当に選んで呼んだのは、一際目立つ紅い髪の少年。
「名前は」
「コウ・ロウ! 俺の得物はこいつだ!」
名を呼ばれて前に出た紅い髪の褐色肌の少年・コウは楽しげに身の丈ほどの槍(木製)を軽々と振り回した。
「あんたとやったあと、あっちにいる眼鏡のところに行ってもかまわないよな?」
「……あぁ、キサラギのことか。いいんじゃないのか?」
「よっしゃ! すぐに終わらせてやるぜ!」
槍を軽々と振り回し、脇を締めて構えるコウ。
リクは“条件言ってないが…”と思いつつ、訓練用の木剣を取り出し構える。
ちなみにリクが聞いていなかっただけなのだが、勝敗の条件は地面に倒れたほうが負け、である。
「いざっ」
リクの掛け声と同時に、コウは鋭い突攻撃を放つ。
リクはそれをたやすくそれを避け、スキをついて槍を跳ね上げるように剣で押し上げる。
その力に持って行かれそうになったコウはバランスを崩しかけるも、ぎりぎりのところで踏ん張りを見せて倒れることはなかった。
「はぁ! てやぁ!!」
素早く体制を立て直したコウは速い突攻撃を幾度も繰り出すもリクには当たらない。
リクはコウからの攻撃を避けつつ間合いを詰め、またスキをついて今度はコウに足払いを食らわせ体制を崩した。
「やべぇ……!!」
コウは倒れまいと足掻くがそれも虚しく地面に倒れこむ。
と同時にリクの木剣がコウの顔スレスレのところで地面に突き刺さった。
コウの顔が青ざめる。
「勝負、あったな」
青ざめていることも気にせずにリクは剣を抜き、“次ー”と次の生徒を呼ぶ。
が、他の生徒も青ざめており、“来ないのか?”と首をかしげながら問うリクにみなブンブンと首を縦に振るのだった。
そして授業後。
「貴様はバカなのか!? もっと手加減できんのか!!」
「あれは……さすがにやりすぎよね……」
様子を見ていたのであろうカイに怒鳴られ、ミユウにぐさりと言われて地味に凹んだリクがいたとかいなかったとか。