前回に引き続き、cosMo@暴走Pの楽曲「転生少女と転生少年」をパロってみました。
迷子少女の構想を考えていた時、新曲で転生が上がって聞いた瞬間、今まで考えていた構想がガラガラと音を立てて崩れ去るぐらいの衝撃を受けた曲でもあります。
ボカロが平気で、興味がある人はぜひとも聞いてほしい。
次いでいえばシリーズで2ndアルバム「星ノ少女ト幻奏楽土」を聞いてほしいです。
家出少年と迷子少女聞いてから転生少女と転生少女を聞いてみてほしいです。
あ、前作の迷子少女と転生少女の雪奈、いつも書いてる学パロと別人です。
原曲:転生少女と転生少年
キミを眺めているだけで満足でした。
キミの親友でいられるだけで満足でした。
だけれど、キミの隣を取られるのはとても不愉快でした。
転生少女と転生少年
私の名前は日向 凛(ひなた りん)。
空色の瞳と山吹色のふわふわパーマが私のチャームポイント。
制服は指定のスカートさえ入れいればいいので、マーガレットの刺繍のはいった黄色のパーカーがお気に入り。
そんな私には大好きな親友がいます。
彼女の名は矢島雪奈ちゃん。
茶色のふわふわボブにちょっと珍しい紫色の瞳を持った、可愛い可愛い女の子。
中学から同じクラスで、雪奈ちゃんが有名な王華高校に行くというから、偏差値の低かった私は必死になって勉強して見事合格した。
雪奈ちゃんのためなら頑張って勉強もするし、嫌なことだってする。
雪奈ちゃんのためなら……そう思うとなんだってやれる気がする。
……きっと、私は雪奈ちゃんのことが好きなのかもしれない。
友達としてではなく、恋人にしたいと思うぐらい。
もし、彼女が受け入れてくれるとしたら、愛でながら一つになりたい、独り占めしたい。
だけど、私も彼女も女の子同士だから、この気持ちは押さえて親友で我慢してる。のに……
「え、もう一回聞いていい?」
「だから、私、中瀬先輩に告白されたのっ」
顔を赤くして、小声で言う雪奈ちゃんのことばが、私の頭を叩きつけた。
中瀬里玖と言えば、学校いち大きなファンクラブを抱えた、銀髪の2年生……
こんな風に照れる雪奈ちゃん、見たことない。
こんな風にさせた男が、中瀬里玖が憎い。
「雪奈ちゃんは、なんて答えたの……?」
「まだ、答えてないの……」
手をもじもじさせながら答える雪奈ちゃんは、恋する乙女そのもので。
近いうちに、きっとふたりは付き合う気がする。
だって、入学してからちらちらと中瀬里玖のことを見ていたのを、私は見ていたから。
「そっか……ちゃんと、答えなきゃだめだよ?」
「……うんっ」
それから数か月後、予感した通り雪奈ちゃんは中瀬里玖と付き合いだした。
中瀬里玖には大きなファンクラブがあるから、付き合ってることはおおっぴらにはできない。
そんなことしたら、ファンクラブの女どもから雪奈ちゃんが狙われてしまう。
それだけはきっと、避けたいだろう。
もちろん、私がそんなことさせない。
だから、私は仲睦まじくしている男女(ふたり)を遠くから見る。
手をつなぎながら歩く二人を見ていて、中瀬里玖を殺したくなる衝動に駆られた。
そこにいるのは、私のはずなのに!!
「こんな自分、大嫌い……! どうして、私は男の子に生まれてこなかったの……!!」
雪奈ちゃんへの想いと、あの男へに憎しみが心の奥底に、汚泥のようにたまっていく。
腐水の中でもがきながら、幸せに満ちた水面を仰ぎ見ているような、このもどかしさが苦しい。
あぁ、苦しい。
雪奈ちゃんの隣は、私のものだったのに……
「雪奈ちゃん……なんで、なんであんな男となんかと……」
自室のベッドにうつぶせになりながら私はつぶやく。
昨日もいつものように二人を見ていて、見たくもない場面を見てしまった。
付き合っているならばあり得るだろう場面、二人がキスをしていた。
ますます殺意が湧いてくる。あの男を、殺してやりたい。
「雪奈ちゃん……」
いつも定期入れに入れている、中学卒業の時にとったプリクラを出して眺める。
恋人つなぎをして頬を寄せながら撮ったプリクラ、ラクガキ機能で書いた文字は“ダイスキv”の文字。
「雪奈ちゃん、雪奈ちゃん、雪奈ちゃん……!!」
―貴方ノ ソノ 不幸ニ サヨナラ―
ふっと聞こえた声に、私は顔を上げた。
その声は女のもので、私の心にじわじわと侵食する。
―《街(ステラ)》ハ 絶望スル 貴女ニ 『現実逃避』ト言ウ 処方箋(おくすり)ヲ 与エマス―
ステラとかおくすりとか、わけわからないって思ったけど、そんなことすら吹き飛ばすように、私の目の前に大きな穴が開いた。
先の見えない真っ暗な穴。
だけど私の直感が訴えてる。
この穴の先に、私の描く理想がある、と。
私は、プリクラを握りしめたまま、穴へと飛び込み――
―――こっそりと「♀(ワタシ)」を『♂(ボク)』にすりかえた―――