記事一覧

【現パロ】童心少女と大人世界・2


続き
(もういや! ちゃんと仕事してきたのに! 怒られながらもちゃんと終わらせてきたのに!)
 悠衣はがむしゃらに街の中を走っていた。
(紗良ちゃんがあんなこというなんて! それを聞く支部長もひどいよ! こっちの話なんてまるで聞いてくれないのに……!)
 ぽろぽろと涙があふれ、視界がゆがむ。
(みんな、みんな……大っ嫌いっ!! あっ)
 石につまづき、悠衣は派手に転んだ。
 そのまま座り込み、うなだれて涙をこぼす。
「もういや……こんなのなら子供のままでよかった……!」

―貴方ノ ソノ 不幸ニ サヨナラ―

 どこからか聞こえた声と撫でられた感触に悠衣は顔を上げる。
 悠衣の目の前にいたのは、自分よりも幼い、低学年ぐらいの女の子。
 どこか、悠衣に似たような風貌で同じような眼鏡をかけている。
 女の子は悠衣に向かって手を差し伸べた。
 涙をこぼしながら悠衣は女の子の手を取ると、女の子はある場所を指す。
 その先には、光る丸い場所があった。
 まるで、ワープゾーンにも似たサークル。
 悠衣は立ち上がり、女の子に導かれるようにその場所へ歩いていき、そして――
「水卜! ……悠衣!!」
 息を切らした護が悠衣の腕をつかみ、引き上げる。
「なにやってんだよ! 落ちるところだったんだぞ!!」
 怒声にも近い声をあげる護だが、悠衣はウンともスンとも言わない。
「おい! 悠衣聞こえてるの……か!?」
 悠衣の体がぐにゃりと力が抜けたかのように地に落ちる。
 慌てた護は幾度も悠衣の名を呼び続けた。

《秩序レベル0→1》
「ん……」
 何もないところで、小さな子供たちが目をさまし、起き上がる。
 帽子をかぶった男の子、外国人っぽい男の子、ワンピースを着たショートボブの女の子、ボーイッシュな女の子、そして眼鏡をかけたロングの女の子。
 眼鏡の女の子はまるで、悠衣を小さくしたような子だった。
「ここ、どこだろう…」
「わかんないや」
「ほかにだれかいるのかな?」
「……」
 顔を合わせ、ここは何処だろうと話す子供たち。
 眼鏡の子がはっと思い出す。
「そうだ。あたし、ユイ! みんなはなんていうの?」
「わたしわユキナ。よろしくね」
「ヒカリ、よろしく!」
「おれわレン! よろしくな!」
「……リク」
 眼鏡の子から、ショートボブの子、ボーイッシュな子、帽子の子、外国人っぽい子が順々に自己紹介していく。
「なにしてあそぼうっか?」
「おにごっこしようぜ!」
「「「さんせーい!」」」
「……」
「それじゃ、いくぞー!」
 帽子の子・レンが率先して鬼決めを始まる。
 外国人っぽい子のリクも黙っていながらも参加するのだった。
 やがて時間が経ち、空は宵の帳に包まれていた。
 鬼ごっこやかけっこで楽しんだのか、みな疲れて地面に寝転がっている。
「つ、つかれたー」
「いっぱいはしったもんねー」
「もう、うごけないよ……」
「……」
「でもさー」
 レンがつぶやく。
「なーんもないよな。これじゃかくれんぼとかもできないよ」
「……そうだねー」
「ほかのあそびもしたいよね」
「あ、ながれぼし!」
 空を見ていたユキナが指をさす。
 空にはたくさんの流星が流れていた。
「おほしさまにおねがいしよう!」
「うん、それがいいよね!」
「そうしよそうしよ!」
 子供たちは流れていく星々に願うため、それぞれ手を組んで祈る。
『あたらしい "あそび" を わたしたちに ください』

トラックバック一覧

コメント一覧