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昼休み

学パロを書くきっかけ。
もともとは診断メーカーで
「あなたは2時間以内に2RTされたら高校舞台でラブラブちゅっちゅな里玖雪を書くべきです。」
と2回も出たからだったりする。

続き
 とある県にある、県立王華高等学校。
 この学校はあることで有名な学校だった。
 そのあることとは生徒たちによるファンクラブ。
 テレビに出てる著名人たちのものではなく、特定の生徒のファンクラブを作り、集っているのだ。
 何故か自然とイケメンばかりが集まるこの学校で、一番人気が高いのは3年生の中瀬里玖という少年。
 銀の短髪にペールグリーンの瞳は外国人を思わせる風貌だがれっきとした日本人で、誰に対しても冷たい反応をするのだが、それが女子生徒達の心を掴んでいるらしい。
 そんな彼にも大切な友人はいる。
 中学から付き合いがあり、同じクラスに在籍する香月弥悠と言う少女、そして弥悠を通じて知り合い、一目惚れをした矢島雪奈と言う一学年下の少女。
 同級生達には冷たい彼も、弥悠や雪奈の前では数少ない笑顔を見せる。
 ……が、それが里玖ファンクラブの会員たちには許せないとか何とか。


 とある日、休み時間に里玖ファンクラブの会員達はこぞって彼のクラスへ来ては黄色い声を上げながら彼を見ていた。
 この光景はファンクラブが作られ始めたころから見られていたため、教師たちもあまり気にしていないのだが、追っかけられている当人に静かで休まる時間がないのは光景からしてわかるだろう。
 それが連日続けば…………
「…里玖、最近雪奈に会えてる?」
「……」
「あ、うん。わかった。会えてないのね」
「……俺は」
「何も言ってないって言うんでしょ。顔でわかるわよ。そんなやつれた顔されてわからないほうがおかしいわ」
 彼の表情から様子を知った弥悠。
 だが、彼は無表情のままで、御世辞にもやつれた顔はしていない。
「そうね、あの子も会いたがっていたしね」
 そう言いながら弥悠はおもむろに携帯を取り出して、ポチポチと打ち始める。
「はい」
 そう言って、打ち終わるや否や弥悠は里玖に携帯を見せた。

『明日の昼休みに屋上集合』

 ブーンと、バイブ音が鳴った。
 驚いたのは女子学生で、携帯を開くとちょっと不思議そうな顔をする。
 彼女の名前は矢島雪奈。
 王華高校の2年生であり、1学年上の香月弥悠の幼馴染であり、学校一の人気者である中瀬里玖の恋人。
 シフォンボブの焦茶髪でどこにでもいるような風貌だが、特別あげるとすれば瞳が紫色であるということ。
 そんな彼女にも、少数だがファンがいる。
 里玖のファンたちからすればとてもおとなしく、常に雪奈を幸せを考えている男子生徒たちだ。
 さて、彼女が不思議そうな顔をしたのは幼馴染である弥悠から届いたメールだった。
 文面にはたった1行しか書かれていなかったのだから。

『明日の昼休みに屋上集合』


 雪奈は首を傾げた。
(明日…? また唐突だな……)
「雪奈、どうしたの?」
「あ、なんでもないよ」
 一緒にいた友人にそう言いながら雪奈は返信を打つ。が、
『あ、弁当よろしくねー☆』と続きが来るのだった。
(お弁当まで……何入れようかな)
「雪奈、顔にやけてる~。彼氏からでしょ~」
「そんなことないよ~」
 友人に言われ、照れ隠しするようにいう雪奈。
 ひっそりと里玖にも会えたらいいなと思うのであった。


 そして翌日。
 2人分の弁当を思って雪奈は3年生の教室に向かっていた。
(よくよく考えたら3年生って今日午前授業だったはず……委員会があるのかな?)
 3年の教室が並ぶ廊下は閑散としていた。
 授業が終わって帰った生徒も多い様子で、残っている生徒もまばらだが相変わらず里玖と弥悠のクラスの前にはファンクラブの生徒たちがいた。
 しかし空気はわずかに落胆の色に染まっている。
 そんな様子を見ながら雪奈はまっすぐと屋上へ。
(やっぱり今日は帰っちゃったか……いいや、急ごう。弥悠が待ってる)
 屋上へと続く扉に手をかけ、開く雪奈。
 空は快晴で気候も暖かく、外で食べるには絶好の機会だった。
「みゆー。来たよー」
 2人分の弁当が入った手提げ袋を揺らしながら声をかける雪奈。
 しかし帰ってきた声は違う人物のものだった。
「雪奈」
「!?」
 声と共に取りつけられた給水塔の陰から現れたのは里玖だった。
 突然の登場に雪奈は驚き、頬を赤く染めた。
「え、あ、あの……み、みゆ……」
 “弥悠はどこに?”と聞きたい雪奈だが、緊張のせいか言葉に詰まってうまく聞くことが出来ない様子。
「あぁ、香月なら先に帰った」
「え?!」
「用事があるそうだ」
「なによ……人のこと呼んどいて……」
 “これどうしよう”と雪奈は呟きながら持ってきた手提げ袋を見る。
 里玖も視線を下げてそれをみた。
「それは?」
「あ…えと、弥悠がお弁当お願いっていうから……その……」
「食べてもいいか?」
「へ!? で、でも……」
 たじろぐ雪奈に里玖は少し困ったような笑顔をして「ダメか?」と聞いてくる。
 赤い顔をさらに赤くして首をぶんぶんと横に振る雪奈は、里玖の隣に来るとちょこんと座った。
 そして袋から弁当箱を2つだし、1つを里玖へ。
 受け取った里玖は“いただきます”と言って食べ始める。
 雪奈箸を持つが、手は進まない。
「上手いな」
(…そういえば、どうして私なのかな……)
「…? 食べないのか?」
(……私以外にもきっといい人がいるはずなのに……)
「雪奈?」
「あ……あの……」
「なんだ?」
「な、なんで私、なんですか?」
「ん?」
「や、やっぱり、私じゃ合いません……!」
「ん?」
 唐突な雪奈の問いに首を傾げる里玖だが、俯く雪奈を見て思いつく。
「わ、私なんかより、もっと素敵な人が……」
「……雪奈」
「だから……」
「雪奈」
 言葉を遮るように里玖は雪奈の名を呼ぶ。
 彼女が顔を上げると、彼との距離は近く、互いの唇が重なり合う。
 触れるだけの短いキス。
 里玖が雪奈から離れると、驚いた表情で顔全体を赤く染める。
「な…ななななな!?」
「好きじゃなければこんなことはおろか、傍にすら置かないし寄せ付けない」
「え…?」
「こうしたいと思ったのは、お前だけなんだ」
 そう言った里玖は雪奈から視線をそらし、食べていた弁当へと向ける。
 けれども耳が赤いことに気付いた雪奈は思わずクスリと笑った。
 そしてポスッと里玖の肩に寄りかかり、呟く。
「ありがとう……里玖」

おわり

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